第12話

 ーー三日後、小会議室ーー


「それじゃーこの因字ファクターわかるひとー!」


 返事が無い。ここで手が挙がらないのは多分日本人の気質だろう。


zzzガー

 一部訂正。アツシは寝てるだけだった。


「じゃあ、声の挙がったアツシくん。これ読んでみてー☆」

zzzゴガー


 今、ピキリと青筋を浮かべたのが見えた。アイラは黒板の備え付けの小さな引き出しを開け、敢えて小さくなったチョークを幾つか手に持った。


「起きてる優等生のみんなー☆これから答え合わせをするね☆」


 アイラは短いチョークを宙に放り投げ、黒板に書かれた因字に触れ、一因型の物字として魔法を発動した。


「『マジカル☆フィジカル☆ショット』!!」


 空中に舞ったチョーク達は突然落下を止めて一斉にアツシの方へ飛んで行った。手で撃った輪ゴム鉄砲より少し速い位の速さだ。


 先頭のチョークがアツシの鼻提灯を割り、


「あだだだだだ!!!!」

「おはよう、勇者様☆昨夜はお楽しみだったんですかねぇ☆」

「お楽しんでねーよ!!て、何でそのネタ知ってん......どぅわぁ!?」


 アイラは恐らくさっきのチョーク弾と同じ原理の魔法で高さ凡そ三メートルほどの天井にアツシを貼り付けた。


「ネタ?が何のことかは知らないけど、これで何の物字か分かったよね、アツシ君?」

「知るかー!!降ろせー!!」

「ん〜☆それじゃあ、最近こっそり頑張ってるユキヤ君これは何の物字かな?」


 何故バレているのか。まあ良いか。


「...ハァ、『念動サイコキネス』の因字ですね。『念動』系統の因字の基本の字です。」

「大☆正☆解、何処ぞのおマヌケ勇者と違って善く励んでいるね☆★」

「二度も言わんで良いわ!!さっさと降ろ......グギャア!!」


 アツシは落下し、勢い善くフローリングに叩きつけられる。


 一見落ちただけだが、明らかに自由落下よりも初速が速かった。また、腹から不自然に落ちていった。今のは恐らく......。


「『念動』の因字に『弾性バウンド』の因字を繋げた二因型の物字を使ったんですね。」

 コウイチが答えた。


「そう?『念動』は合ってるはずだけどもうひとつは『衝撃ショック』の因字だと思ったんだけど。」

 自分は意見の相違を述べる。


「う〜ん☆皆頑張ってる様で嬉しいよ♡いい線行ってるけど残念☆今回は背中の所に瞬間だけ『念動』と『圧力プレス』を使って見たんだ♡『弾性』は先ず飛ばしたい逆方向の力がいるね。『衝撃』は...ん〜微妙なニュアンスだけどもっと押し出される様に飛び出すのと.........最低値が比較的高いからうっかり死んじゃってたかもだからね♡」


「惜しいな。」

「残念。」

「待て、お前ら何が惜しくて残念なんだよ!!外れた事だよな!?な!?」


 何がってそりゃあ。


「口にするまでも無いな。」

「そうだよね。」

「口にしてくれ〜〜!!」


 ははは、と笑い合っているとアイラがパンパンと手を叩いた。


「一人以外が優秀だったから今日の授業はここで終わり☆明日の召喚祝賀パレードに備えて早めに寝ること。」


 え...?

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