第11話
ーー同日、夜ーー
自分達は大食堂に集まって、夕飯を食べていた。
今回は料理長の謹製である。昨日ほど豪勢な具材は使ってはいないが、同じ位に手間が掛かっていて、とても美味しいものだった。
「王属騎士さん達って凄いんだね......」
「ジゼルさんはもっと速いらしいしね。」
「むがー!!どうして異世界に来てまで勉強しなくちゃならないんだああぁぁ!!」
「わ、私もあれくらいしないとキャラ立たないの?」
「......」
それぞれ今日の訓練、授業のことを考えていた。尚、イクコは小さい口に物を運びながら黙々と配られた本を読んでいた。
「イクコちゃんって凄いよね。僕も本は好きだけど、読めもしない言葉の本を積極的に読もうとなんて思いもしないよ。」
「.........」
声を掛けてみたが反応はない。聞いているかすら怪しいところだ。
「知識は
「...え?」
「能力は持ってれば役に立つ。役に立っていない様に見えても活きている。」
「......うん、そうだね。」
口を聞いてくれた事に少し驚いた。イクコの言葉には共感出来る。それ以上に凄みが宿っている。
「人は『無知の知』を讃える。けど私からしたらそもそも『無知』その物が罪よ。だって間違いに気付いた時にはその間違いはもう終わっているんですもの。」
「.........」
その言葉に忘れかけてた、忘れようとしていたクロトという刺さった心の棘が痛んだ。
「『過ちて改めざる之を過ちと言う』有名な論語の一説。分かるでしょう?本好きさん?」
「教科書にも書いてある位だからね。あぁ、そうだね。君の言いたいことが解ったよ。『初めから十全に備えて後悔する結果を産むな』。」
「そういう事。貴方は既に過ち一つよ。私は後悔しないようにするだけ。」
心に刺さった棘は痛むけど、勇者なんだ。乗り越えないと。
「それはそうとて口を聞いてくれて嬉しいよ。ありがとうイクコちゃん。」
「ちゃん付けは止めなさい。下に見られているように聴こえて不愉快だわ。」
ーー深夜、貴賓室周辺廊下ーー
「こんばんは。ユキヤ様。」
「こんばんは。フレイアさん。」
昨晩と同じ廊下でフレイアと出会った。善く眠れていないのか少し窶れている。
「体調が優れ無いようですが、大丈夫ですか?」
「ええ、少し疲れただけなので大丈夫です。」
ふふっ。と、フレイアは誤魔化す様に笑う。彼女はあまり嘘は得意では無さそうだ。
「クロトの事。」
「っ!?」
ほら。こんなにも簡単に解ってしまう。
「知っていたんですか?ここから追い出すって。」
「...............えぇ、知っていたわ。」
「だから貴方は......」
あんな
そう言おうとして止めた。言ったら、自分に歯止めが効かなくなる気がしたから。
「僕は間違いを犯してしまった。何があっても言うべきだったんです。」
「違う!!それは.........」
「いいえ、僕の間違いです。少なくとも僕はすべきだった一人です。」
「ーーーッ!!」
フレイアは唇を噛み締めて、足を踏ん張って泣き崩れるのを我慢する。
自分は一歩前へ出る。
「でも、いや、だからこそ決めたんです。間違いは犯さない。万全を尽くして。氷の勇者、
「あ......」
フレイアは目尻に溜まって今にも零れそうだった涙を拭った。
「勇気をありがとうございます、勇者ユキヤ様。私も決めました。私はもう後悔したくない、後悔しない!!」
涙の後が残るフレイアの
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