第5話
玉座赤道の間は段の上に玉座があり、その玉座に続く様に赤い絨毯が敷かれている大きな部屋だ。
今、玉座にストラクスが座り、その周囲には三〜四十代の女性が隣の玉座に座し、自分達と同じ位であろう少女が二人、二十歳辺りの男が一人囲んでいる。恐らく王族、ストラクスの家族だろう。
その一段下にはジゼルが控えている。
そして、段の前に自分達が横一列に並び膝まづいている。
「よく来てくれた、若き勇者達よ。それぞれの名を申せ。右からだ。」
ストラクスは問う。
「
「
「
「
「
「......
概ね適当な並びであるが、アツシとイクコは端に置いた。
「有無。君達伝説の六勇者が無事揃い感激である。是非とも魔王を倒してくれ。その為の協力ならば一切惜しまぬつもりだ。さあ選剣の儀へと移ろう。」
選剣の儀?名の通り剣を選ぶのだろうか?
ストラクスの号令で玉座赤道の間の横の壁のカーテンが開けられた。そこには剣を掲げる戦士の像が左右三つづつ、計六つ並んでいた。戦士のデザインは一緒だが剣の意匠はバラバラだ。
「神殿長、前へ。」
「はい、王命の侭に。神殿長フレイア、今此処に。」
神殿長フレイア、呼ばれて出てきた人物は白いベールを被り、透けた黒い布で鼻から下を隠した白装束の女性だった。
「はじめまして勇者の皆様方、神殿長件筆頭巫女のフレイア、と申します。お会いできて光栄です。」
その作法は優雅で(主にクロトが)見蕩れていた。
「お立ちください。はい。今から執り行う選剣の儀は六つの聖剣を貴方方に与えると同時に自身が何の勇者なのかを判別します。」
六つの聖剣、六種の勇者。その響に少し胸が高鳴る。今までもだが何処ぞの異世界の冒険譚らしくなってきた。
「但し、これは誰が聖剣を選ぶものでもありません。聖剣が勇者を選ぶのです。」
「聖剣が選ぶ?剣が意志を持ってるんですか?」
クロトが問う。
「ええ。実際受ければ分かると思います。さあ始めますよ。」
フレイアが手で押すジェスチャーをして来たので、自分達は三歩ばかり下がる。フレイアはOKのハンドサインをして、前へ振り返った。片膝を着き、両手を組み、俯いて祈りの体勢をとり、祈りの言葉を諳んずる。
「勇者を使わせし我らが大いなる母なりし父なる御方よ。我が祈りと持って幼き勇者達に聖剣の加護を与えたまえ!!」
フレイアの体がうっすら光っている。フレイアの言葉に反応し、戦士の石像が振動する。その震えは段々と早く細かくなっていき、その動きが止まって見えるほどになった頃、剣士の像は崩れ去り、塵と消えた。しかし持っていた剣だけはそのままの場所で宙に浮いていた。
そして剣は上へと跳ね上がり、暫し入り乱れる様に舞った後、六人の前に落ちて床に付き立った。床の修繕費が気になる。
おぉ、と場がざわめきだす。
アツシの前には、赤い刀身の大振りな両手剣。
コウイチの前には、一際光り輝く純白の直剣。
クロトの前には、黒い靄のかかった直剣。形だけはコウイチの純白の直剣とそっくりだ。
イナホの前には、金の鋭い意匠が目を引く雷を纏った刀。
イクコはの前には、草花や若芽の彫刻の美しい細身の所謂レイピア。
そして自分の前には、青白く半透明で下に落ちる冷気を放つ細身の直剣だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます