第4話

 前世の死因。イクコはそう言った。やはり、他の皆も1度命を落としているのだろうか。


 沈黙は今までより長く感じた。未だお互いの事なんて名前と年齢位しか知らないのに。

 沈黙を作り出した当の彼女は先程と何ら変わらぬ薄い表情でグラスのジュースを飲んでいた。


「ま、まぁそれぞれ色々あるよな。うん。」

 コウイチが沈黙を破ったことでほんの僅か場が和んだ。彼はクラスのリーダー的な存在だっただろう。


 ふとアツシが口を開き、


「オメー、ガキだな。」


 と言った。


 それに対しイクコは左の細い眉をピクリと上げ、


「たった二つしか変わらないじゃない。変に年上ぶらないでくれない?剣山頭猿。」


 大層ご立腹の様相である。


「まあまあイクコちゃん落ち着いて。」

 と、イナホが宥めようとするが


「年上ぶるなってセリフが既にチビっぽいんだよなあ。」

「あらそう。でも私は先に産まれただけで年下を下に見る奴は嫌いなの。お解り?ハルキゲニアヘッド。」

「ハル...なんだって?」

「ハルキゲニア。バージェス動物の代表例よ覚えておきなさい。」

「知るか!!」

「ハッ!これだから無意味に歳を重ねただけの猿は。」

「充実した青春を送ってんだよ!!」

「まあまあ落ち着いて二人とも。会って初日で喧嘩しないでよ。」

「フーッ!!フーッ!!」

「ぐぬぬぬ」



 コウイチが二人の仲裁に入った。イナホはイクコを押さえて、自分はアツシを押さえた。二人は言葉は交わさないものの射殺さんとばかりに睨み合っている。またクロトはポカンと呆れて、花瓶はガタガタ震えていた。

 怒って、ぐぬぬ、なんて言う人は初めて見たかもしれない。


「勇者様方、そろそろよろしいでし.........?どうかなさいました?」


 ジゼルが扉を開けて入って来て訝しげな顔をしている。


『いえ......なんでも。』


 押さえている三人は苦笑いをして返した。


「あははは......ゴホン。取り敢えず玉座赤道の間までご案内します。そこで謁見の儀を執り行います。基本、名前を言うだけですので難しい事はありません。ただ国王陛下や王国の重鎮の方々もいらっしゃいますので、礼儀だけはしっかりなさいますよう。それではお連れします。」


 ジゼルは踵を返し、大食堂から歩いていった。自分達も今度は遅れず着いて行ったが、イクコとアツシの睨み合いは直前まで続いた。

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