第27話 布教
タワーマンションに佐川悦司が帰ると、廊下で、また「光の子教団」の三人と出くわした。
新時代の到来の予兆を得ました。
メシアの降臨は、間近です。
滅びに向かうか、救済されるか、道は二つに分かれているのです。
あなたも、洗礼なさいませんか?
悦司は、仕事帰りだったので、
「疲れておりますので」と、断ると、部屋に入った。
ニュース番組を見ると、「光の子教団」の行進が取り上げられているところだった。
またか…。
彼らは、本気で、メシアが降臨すると考えているのか…。
ネクタイを解くと、不機嫌にソファに投げた。
世紀末で滅ぶといわれた地球も、まだある。
そう何度も脅かされても、という抵抗感もあった。
気付くと、郵便受けに「光輪(こうりん)」という冊子が入れられていた。
蔵知ミサを、光の使徒とする集団「光の子教団」の冊子です。
中年の女性が、白黒の写真に微笑みながら写っていた。
悦司は、その冊子を、マガジンラックに放り込んだ。
次の日、駅の図書コーナーに、悦司は、冊子を入れた。
それで、総てが済んだと、安堵した悦司だった。
―つづく―
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