第25話 就職


佐川悦司は、広告代理店の大手、N通の入社式に出社した。


簡単な入社式の後、座席の札の色によって、違う部屋に案内された。


君たちは、こちらに…。


悦司の入った部屋は、パソコンが設置された部屋だった。

十数人の男女が、パソコンの前に座った。


新人として、やってもらいたい仕事です…。


三時間、自由にネットサーフィンしてください。


その都度、出てきた画像を、プリントアウトする。


一人に一台、プリンタを用意しています。同じ番号のプリンタに、印刷が出るようになっています。



彼らは、それだけいうと、部屋から立ち去った。


悦司は、新入社員としての最初の仕事を、黙々とこなしていった。


設楽しおりのことが、頭に浮かんだ悦司は、

「東京オペラハウス」と入力した。

三沢えりこのことが、頭に浮かんだ悦司は、さらに、「東京スカイ」と入力した。

それからは、自分の周辺の出来事にちなんだワードを入力しつづけた。


三時間後、中堅社員が再び、入室して、プリンタの印刷物を回収し始めた。


「みなさん、もう帰っていただいて結構です。」


明日、皆さんの配属先を、掲示します。


中堅社員は、それだけ言い残すと、そそくさと、部屋を出ていった。


後には、「楽な仕事だったな。」「遊んでいるようなもんだよ。」という声が、沸き起こった。


彼らとは、二度と会うことはなかった。



―つづく―

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