第14話 オペラハウス


佐川悦司は、タキシードを着た。


「迎えの車を遣るから。」


凪子から、指令のような、指示がきた。


車が、「東京オペラハウス」に到着すると、悦司は、中に入っていった。

ホールで、凪子は、輪の中心にいた。

凪子は、悦司を見つけると、わずかに手を挙げて、合図した。

「よく来たわね。」

凪子は、小悪魔的な笑顔を浮かべた。


「こちら、L国の駐在事務官ロンダード夫妻」

ロングドレスを着た女性と、若い夫の、カップルを紹介された。


「あなたの期待の星ですか?」

ロンダード氏の言葉に、凪子は高笑いをした。


「それは、彼次第ですわ。」

凪子の、黒のロングドレスは、まるで、ドラキュラの舞踏会のような、雰囲気をオペラハウスに醸し出していた。


「それと、こちらは。」

「気紛れな方だ。」ロンダード氏は言った。

「あなたも大変だね。」


「だが、彼女は、鍵を握る女性だ。」


「離れないことだね。」


「佐川さん」

お嬢様が、向こうにいらっしゃいます。

秘書が、悦司を呼びにきた。


気紛れな凪子は、もう次の話相手を見つけて、動いていた。


「早く、お嬢様と合流なさってください。」


ロンダード氏の謎の言葉に、悦司は、何かを見出そうとした。

それは、謎めいた社交の世界の扉を開けた夜だった。



―つづく―


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