第15話  造反


佐川悦司が、宇津見凪子に誘われてオペラを観劇した夜、東京に初雪が降った。


昨日の劇はどうだったかしら?


凪子は意味深な口調で、悦司に聞いた。



「モーツアルトの「こうもり」の観劇は初めてなんで。」

悦司は、言葉を濁した。

実は、劇の内容は、さっぱり意味不明だった。


「気に入った?私の趣向は。」


凪子は、更に意味深な言葉を、悦司に掛けて来た。


「さっぱり意味がわからない。」

悦司は、思ったままを、口にした。


凪子は、高笑いを響かせた。


「困った人だ。」

悦司の先輩の高塚が凪子を評した。

「あの人は、退屈が嫌いなんだよ。」

悦司は、凪子に振り回されている自分を、もう一度戒めた。


「だけど、理由もなしに、動く人じゃない。」

あの一族は、皆ああいった感じだしね。

高塚は、

「とにかく慣れることだよ。悦司。」

と、悦司を宥めた。


「人間は、ある意味社会的動物だ。順応するしか、他はないんだ。」

悦司は、尊敬する先輩の言葉を深く噛み締めた。


テレビでは、与党の造反議員のニュースが流れていた。

「何か動いているな。」

高塚は、テレビを覗き込んだ。

「政界再編期の到来になるのかな。」

悦司は、高塚と一緒に、反対票を投じた議員集団のニュースを見た。


何かが、違う…。

悦司は、ニュースを見ながら、不確かな違和感を感じていた。



―つづく―





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