第12話 セミナー


佐川悦司は、友人と落ち合ってセミナーに出席した。


「架空通貨の時代」


そのセミナーは、最近喧伝されはじめていた、架空通貨を説明し、今後の対応を示唆するものだった。


笈川一馬(おいかわかずま)は、テレビTの経済報道番組「ドキュメント経済大陸」の主席ディレクターだった。


通貨には、顔がありました。

その顔が、時代に応じて、変化を求められてきたわけです。


ですが…。

国際化、ネット経済の発展に、その顔が対応しきれなくなったとき、

一つの提案として、計数化され、それが独り歩きはじめました。


そして、第三次経済発展期の次世代型の通貨として、提案されたのが、「架空通貨」でした。


通貨を、プラットフォームである企業にプールし、それを、自在に流通させる。

そこに、通貨の自由化をもたらすという期待が生まれたという訳です。


計数化されたデータは、ネット時代に対応し、多種多様の取引への流動性を生む。

それが、「架空通貨」が提唱された背景でした。


このセミナーに参加された皆さんに、

「αカード」

への申込書を、差し上げます。


どうぞ、皆さんの経済活動の一助としてお役立てください。


かくして、悦司は、「αカード」の会員になった。


それが、彼を次のステージに導くことなど、知る由もなく…。



―つづく―

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