第10話 暴露


国会議員宇津見啓介の娘、宇津見凪子は、黒いセダンでR市に現れるようになった。


「あの娘?」


助手席の第三秘書が、「はあ。」と答えた。


そう…。


スモークの懸ったウィンドウがスーっと上がって、しおりの傍を、徐速で通り過ぎていった。


「可愛い娘ね。」


悦司は、最初何のことを言われているのか、わからなかった。


「設楽しおり」っていうのね。あの娘。


悦司は、その言葉で、凪子が何をしようとしているのか、察した。


「それは、脅迫ですか?」


悦司の言葉は、冷淡だった。

「何をおっしゃっておられるのか、わかりませんが。」


「あの娘、どういう娘か調べたんだけど。」


凪子は、満面に、意地悪そうな笑みを浮かべた。


「とんだ娘よ。」


悦司は、その言葉を、聞き流すことにした。


「あなたに、似合うかしら?」


悦司の整った顔が、氷のように、凪子の言葉に応じた。


「僕の決めることですから。」


悦司は、それだけ言うと、席を立った。そして、パーティを早々に切り上げて、タワーマンションの自室に、帰っていった。



―つづく―



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