新・第十一章 最終章は、君の明るい未来へ。

第一〇九九回 学園生活、最後の夏休み。


 ――風鈴が奏でる音。心は爽やかに、通り抜ける風は清々しかった。



 一学期末考査も終えて、もうすぐ夏休みを迎える。……でも、もう最後の夏休みとなるの。今は高等部三年生で、それに、今は二児のママ。ビジョンが幻想的なものに……


「なるように、なるだよ、千佳ちか


 と、聞こえる梨花りかの声。並んで歩く帰り道。夏休みは、もう少し先のお話だ。


「でも梨花、進学する大学は、僕ら違うんだよ。進路は、ここに来て皆違うの」


 と、いうこと……


 中等部から高等部まで皆一緒だったのに、卒業したら、其々に皆違う進む路。でも、例外といえば……「梨花と可奈かな、志望大学一緒なんだね。可奈は理数系が好きだけど、確か梨花は、理科が大の苦手で」と、しっかりと声にしていた。何も、不自然なことはなかったと思うけど、梨花はクスリ……と笑って、


「まだお互いが双子だと知らなくて、お友達の関係だった頃の千佳は、とっても無口で大人しかったね。何処か陰があって……もうその陰は微塵もないね、すっかり自然体だ」


 と、言葉を添えた。でも、本当に訊きたいことは、これからだ。


「でも千佳、どうして先生になりたいの? やっぱり瑞希みずき先生の影響かな、何となく僕にも解るような気がする。結婚よりも子供が先にできたところも、そうだったし」


 と、梨花が僕に訊きたかったこと。これこそが本当に訊きたかったこと。


「それもあったのだけど、実は、お母さんが昔、保母さんをやってたんだけど、本当は学校の先生になりたかったそうだったの。お母さんのお姉さんは学校の先生になったんだけど……引っ掛かってたんだね、お母さんのお兄さん、旧一もとかずおじちゃんのことを」


 お母さんのお姉さんは、つまり可奈のお母さんで、お母さんのお兄さんは、旧一おじちゃんのこと。旧一おじちゃんは、学校で起きた虐めを苦に、自殺した。……それが残ったトラウマで、お母さんは学校の先生への道を踏み出せなかった。だからかな? 僕が各園の先生を目指していること、何かにつけて応援してくれている。母の想い深し……



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