第一〇五二回 革命の名のもとに襲撃。


 ――その日は、とても静かな朝だった。灰色に広がるお空、その下の出来事も。



 登校の時から……


 普段よりも静かすぎる教室に至るまでも……


 授業も国語。担当は瑞希みずき先生で、この時ばかりは賑わう。窓からお外を見ることもなくて、集中する授業。五十分という時間が短く思えるくらい、あっという間だから。


 このまま、このまま平凡に過ぎると思っていた今日。


 昨日の図書室で言っていたマリーちゃんの言葉も、嘘のように思えるような程。彼女は楽しそうに語っていたから……「早速始まるよ。陰に潜んだ組織が晒され、陽の光によって干乾びてゆく様。そこから芋づる式に追い込まれるの、闇の住人達は」


 その記憶をも、夢のようだったと思える程の静寂の中、突然のことだ。


 校庭を行進する列。


 まるで量産型を思わせるような緑の男たち。その先頭に、赤い服装のマリーちゃんが指揮を執るような格好となっている。訓練を繰り返したマーチングバンドのようだ。


 それから数秒……


 嵐は巻き起こった。疾風とも、旋風とも思わせるような勢い。


 校長室と職員室の境の場所にある部屋は……

 崩壊にも近い程に、破壊されていたのだ……


 部屋の中は、まるで食い潰された様に、あらゆる書類やPC類なども、その姿を消していた。その作業を終えて、まさしく立ち去ろうとしていた、そのタイミングだったの。


千佳ちかちゃん、大仕事が終わったから、これから一緒にどお? 私のお家でパーティーにお誘いするわ。貴方とは、今後のことについてもお話したいし、そしてこの子のことについても、ご意見を拝借したいと思ってるから。あくまで建築的にね……」


 と、マリーちゃんが声を掛けてきたの。僕は何故か、この場にいた。まるで引力に引き寄せられるように。そしてこの子とは、両手首を白い紐で縛られている松近まつちか君だった。



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