第一〇三三回 それから、その十月十日から始まること。


 ――待ちに待った修学旅行。


 と、言いたいところだけど、その前に中間考査が立ちはだかる。教室内ではその話題で騒めいていたけど、僕は次なる授業に集中を高めていた。少しでも吸収したいと……



 つい最近かな? 僕は数学の時間でも、乱れることのない集中。それを見て、もう一か月となると、柴田しばた先生も……


千佳ちか、何か変わったなあ。もっと力を抜いていいから」と、誉め言葉だけど、


「ううん、まだまだだよ。僕には、あまり時間がないし」と、自身に檄を飛ばした。お腹の子たちのことは、瑞希みずき先生だけではなく早坂はやさか先生にも、柴田しばた先生も知っている話。


 それでも普通に、今まで通りに接してくれる。

 お腹の出も目立ってきたけれど、皆が普通に今まで通りに……


「そうか。わからないこと困ったことがあったら、いつでも相談に来いよ。俺にもわからないことは他の先生にも相談して、必ず答えるようにするから。そう、必ずだ……」

 と微笑んで、柴田先生は言った。


 グッとくること、泣きそうになるのは、やはり最近多くなっていた。



 そんな中で開始される中間考査。以前と違ったものを感じながら受ける。


 昨日は一緒にお勉強をした。僕のお家で太郎たろう君も、梨花りかりん可奈かなも、せつだって美千留みちるだって皆が皆……何だか懐かしくも思える光景。小学生になったばかりの頃。お友達のお家でお友達が集まって一緒に人生ゲームをしたこと。あの頃のように、楽しかった。


 カーテンから零れる夕陽の色まで、ソックリなの。


 帰る時は見送る。そこにサヨナラはなくて「また明日」という言葉を残して……


 再び会うための遠い約束ではなく、もう明日のことだから。お部屋に戻ると、梨花と一緒に後片付け。そしてそのまま二人きりの時間。明日に備えて……眠りが誘われる。


 この日は同じお部屋、僕のお部屋で同じお布団に、梨花と一緒に眠りに入ったの。



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