新・第四章 ちょうどハロウィン時期に。

第一〇三一回 ある晴れた日曜日が、十月の始まりなの。


 ――今日から十月が始まった。


 僕ら高校二年生は、これよりビッグイベントが待ち受けている。



 中等部の時は三年生だったけど、高等部になると二年生で、それが行われる。コロナ禍を超えた今現在。少なくとも政府は、そう認識している中で、まるでコロナ禍が夢だったように、世間に於ける修学旅行の実地を認めていた。もう旅行は普通のことなのだ。


 なので、僕は街に出る。……とはいっても、お隣の市だけれど。


 もちろん一人ではない。……久しぶりに会うお友達がいるのだ。


 電車に乗る時は、後ろの人がピタリと間隔を縮めて寄ってくる。僕はお腹を守るように歩く。あまり早く歩けないから。そこで梨花りかが、傍にいてくれるから安心なの。今日は女の子同士の方が都合が良いから。何しろ下着の購入が目的だから、太郎たろう君には難易度が高いショッピングになりそうなものだから。いつの日にか行った大泉屋が目的地なの。


 久しぶりに会うお友達とは、そこで待ち合わせとなる。


 お友達も、もちろん女の子。だって……女の子の下着だから。と、その文章が脳裏に描かれたなら、お顔は熱く、真っ赤になる趣だ。裸を見られるよりも、何故か恥ずかしい。


 女の子同士の世界だね、やっぱり。


 そう思っていたら、見えてくるシルエット。さらに近づくシルエットに変わってゆく。


りん、こっちこっち」と手招きした。


千佳ちか、梨花まで、ホント久しぶりだね」と、笑みを見せる凛。満開の笑み。秋の桜と呼ばれる秋桜コスモスか、或いは或いは或いは……銀杏並木にはまだ早く、紅葉の時期のよう。


 久しぶりに会うお友達とは、結城ゆうき凛のことだった。彼女は暫しの入院をしていた。義足のある右脚の、新たな義足の調整のため。その義足によって、もう杖は要しないの。


 動きも、普通の子と変わらない程になっていたの。


「調子良さそうだね、凛」と、今度は梨花が、声を掛けた。


「うん、修学旅行、楽しみだよ」と、止まらない歓喜の声。凛は燥いでいた。



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