第九五九回 俳句界のレジェントのもう一つの顔は。


 ――実は、忍者という説もあるの。



 もしも、それが本当ならば、ある意味では納得。


 佐助さすけ君の反応が何よりの証拠だ。類は類を呼ぶ。そして笑みまで見せる安心感。きっと野生の本能に近い感じのもの。だとしたら、佐助君にとっても運命的な出会いだ。


 では、芭蕉ばしょうさん本人からは……


「御想像にお任せするよ」との御言葉。そのお陰で膨れ上がる、想像の数々……


 限定しちゃうと歴史をも覆しかねないから、あくまでも想像。もしもというレベルで留めておくことにしたの。それもまた、俳句の中でのことだから。


 僕は密かに決心する。コンテストのエントリー。


 そこから広がる、溢れる情景。芭蕉さんと出会ってからの物語を。幾つもの季節。季語として表現し、奏でる五七五の調べ。それは水の音から始まったの。夏の日……


 気付けば、暗闇から広がる真っ白に輝く世界へ。

 まるでトンネルから出た、光に包まれる風景へ。


「芭蕉さん、やるよ、僕……」


 と、密かな決意は声となり出現。別の角度からは佐助君が、斬り込む予定……


「そう来なくっちゃ。私は色々と拝見してるよ、とある小説サイトの『書くと読む』に綴られている作品たち。千佳ちか君の超大作な作品も。私のこと、描いてくれてるね。なら、やはり俳句は欠かせられないよ。私は是非、君を俳句の世界へ誘いたかったから」


 と、言ったのだ。だからこそ描く、芭蕉さんと共にした時間たち。


 僕は貴方のことを語る。初めての俳句だけれど……「諄いぞ、千佳。だから俺が手を貸してやるって言ってるんだ」と挿む口。佐助君は、ここからも行動を共にする。


 何しろこの先、向かう場所は夏の風物詩だから。


 煌めく午後の陽射し。潮の香りも併せて。……ならば、もう〆切間近なのだ。それまでにエントリー。芭蕉さんも一緒に、奏でる共に過ごした時間たち。繋がる物語。



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