第九五三回 二度とない青春……


 例えば、令和五年の夏。


 これまでに描かれなかった青春の物語が訪れることに。



 そして繋がる、前回に梨花りかが放ったこと。稲妻シュートだけでなく、意味深な言葉も併せて。それだけに深読みをするならば、梨花の描いたシナリオを、僕らは演じているように思えるの。僕と太郎たろう君の物語を……であるなら、いつからか、梨花は仕掛人となっていたのかもしれない。太郎君との再会を飾れたのも、元はといえば――


 梨花が僕の背中を押してくれたから。


 あらゆる場面に梨花はいた。……僕と太郎君の仲を深く、導いてくれた。どうしてそこまでしてくれたのか? その問いはきっと、これから先も、することはないのだろう。


 仮に問うとしても……


 その返答は、きっと言葉にならないから。そう思えるの。


 そしてまた、梨花は企む。臨海学校のシチュエーション。女の子はムードが大事。梨花も女の子だから、僕好みのムードに合わせることだろう。僕の好みを知り尽くしている世界に一人だけの女の子だから。僕もまた、梨花の好みを知っている。なら、僕もまた仕掛人となる。『千佳ちかの逆襲』と言われる程に、梨花の青春も描いてみせると、意気込む。


 梨花はモケジョという部分を活かす。


 なら、模型大好きな子を検索するの。遡ってみると……梨花は誰から教わったの? 模型、またはバンプラ。梨花のエッセイではパパの影響と語られているけど、その陰には男の子が存在していた。数少ない情報量の中から一人……一人だけいたのだ。


 しかもしかもしかもだよ、僕らの学園にいた。


 同じ学年の子……ではなく、一つ下の男の子。な、何とだよ、同じ生徒会に属していることが判明した。そして臨海学校で、僕らと共に参加する。条件は旧高等部一年生と新高等部一年生だから。一つ下で同じ学年なら、条件にピッタリだ。序に述べるのなら、その男の子は生徒会の中でも危機管理の部門に所属する。名は佐助さすけと言った……



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