第八十二章 その季節! まるでルージュのように。

第五八〇回 秋になると、いつも……


 咲き誇る紅葉のように、紅色のルージュに憧れる。


 想い募る、細やかなバルコニーの向こう側へ……そこはもう、夜のステージ。



 最近は特に、僕は、自分が女性ということを意識するようになった。……それを喩えるなら、天気てんきちゃんのお部屋。コスメ用具が揃っていて、お洋服もお洒落なの。僕とは違って普段からスカート。僕もたまにスカートになることもあるけれど、殆どが、梨花りかがコーディネートしてくれたものや、小学生の頃からお馴染みのワンピース。


 大人って感じの服装が、まだないの。


 ……でね、太郎たろう君が言うにも、まだ千佳はそれでいいって……



 ブーッとふくれ面。僕はどうせ子供だから。


 しかしながら梨花は梨花でマイペース。お洒落も……あれれ? 普段は僕と変わらないの。見た目も僕と同じなのに、諄い様だけれど身長も体重も生まれた日だって、ほんの何分かの差……なのに、僕より大人に見えるの。お姉ちゃんの威厳も纏いながら。


 そんな中での執筆。


 今日もまた。つくづく思うのは、毎日書くことが尽きない。千のストーリーズで収まるかどうかも、まだ見えない。もしかしたら、このエッセイとともに大人になるのかな?


 子供を産むことも、

 僕がママになることも、三人家族から出発することもまた……


 もちろん僕がママなら、パパもいるの一緒に。ダーリンはパパになることも。なら結婚式もするの。お母さんができなかったことを、僕は必ずやり遂げる。その時にきっと、


 ――ウメチカ物語は、その一幕を終えるの。


 そう、僕が受け継ぐお母さんの思い。それは……というところで、


「千佳、白雪姫の稽古。明日から僕が相手になってあげるから、一緒にしよ」


 と、梨花が声を掛けてきた。……そうだね、僕はまだ子供でいい。



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