第五七八回 ルージュを決めるお目覚め。


 ――暫しの間、眠っていた。


 それは熱いシャワーによって、完全な目覚めとなるの。



 そして迎える休日、静かなるお出掛けを結ぶ。……そのためか、細やかなるルージュを引く。でも、お外はマスク一色。マスクが必須項目となるので……そっと、拭き取る。


 マスク生活が……

 その収束を迎える日まで、待つことにした。


 今よりも、もっと、ルージュの似合う年頃になると思うから。なので、今はまだ、子供のままでいいと思う。そして切り替えるジョギングのスタイル。それは、普段着とさほど変わらない。黄色のTシャツに青のショートパンツ。午前の風もそのままに、


 ――爽快な走りを見せる。



 転んだ傷もすっかり癒えた。膝小僧の擦り傷も、もう大丈夫。


 そこで出会う、天気てんきちゃん。いつものジョギングコースでバッタリと。場所はというとね、緑深き森林……とも呼べそうなカントリーロード。スマイルがよく似合う場所だ。


千佳ちかちゃん、怪我はもう大丈夫?」


「うん、すっかり。見事なる若さパワーだね」


 昨日の敵はもう、すっかり今日のお友達。そこからは、会話が繰り広げられる。されどジョギングという名のもとだから、マスクは少しばかり免除。距離には気を遣う。


 それでもまだ……


 ルージュはお預けだね。そう思っていると、天気ちゃんはじっと僕の顔を見る。


「フムフム」「えっ、何々?」「今でも大丈夫みたいよ」「えっ、何が?」「ルージュ」


「……白雪姫でしてみてよ。きっと似合うと思うから。千佳ちゃんが白雪姫なら、私は魔法使いね。勝ち逃げはなしなので、今度は美しさで勝負。クラスはもう合体するから」


 不敵な笑みを見せる天気ちゃん。なら今日のお友達は、明日のライバルとなる。



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