第四五〇回 すると、目の前に登場するの。
――モリオが、のっそりと画面から、カートに乗って飛び出してきた。
でも、それは3Ⅾ眼鏡をしているから……なんてこともなく、モリオでもなくて、お母さんだったの。もちろん僕のお母さんではなく、
ここはまだ太郎君のお家。窓から見える景色は雨で、因みにここは太郎君のお部屋。男の子のお部屋なのだけれど、僕のお部屋よりも綺麗で、整理されている。
ここに入ったのは、もちろん今日が初めてではなく、
……ないけれど、改めて思うの。すると太郎君のお母さん……つまりはおばさんは、
「
と、いつからか、この場にいたようなの。……多分、そっと僕らの背後にいたと思われるの。僕と太郎君のやり取りをも一部始終。全部知っちゃっているということで、
ボン! と思考回路の破裂。または赤面をも加えて、
「可愛いね、千佳ちゃん。今度はおばさんと走ろっか」と出た、遂にその一言が。
「ちょ、ちょっとおかん、千佳は今、俺とプレーしてるんだから」
と、太郎君が申したの、僕は内心……本当に内心で、おばさんに悟られないようにホッとしているの。でも、呆気なく覆されることとなった。太郎君のコントローラーは、おばさんの手に渡って意図も簡単にゲームスタート……僕はおばさんとプレーする運びとなった。加速……超加速。コントローラーのBボタンに負荷がかかりそうな勢いだけれど、
「おいおい千佳、ちょっと飛ばし過ぎじゃねえ。おかんの横に並んで……
って、おまっ、おかんについてってるじゃないか? 本当に初めてなのか?」
響く太郎君の狼狽。それとは裏腹に、おばさんのニンマリする顔。……そうなの。画面のモリオカートの二台は美しくも、息ピッタリに横並び。音速の勢いで走っている。
そんな光景なの。……僕はポカンとしながらも普通に、
あくまで普通にプレーしている。というのか、アハッっと笑い声が漏れそうなほど楽しいの。……あっ、お勉強のこと、すっかり忘れていた。と思うほどに。
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