第六十四章 ――疾風からの構想。
第四四九回 まるでモリオカートのように。
――君よ、走れ。
画面の中。カートに乗って、キャラはモリオ。モリオ・ブラザーズだ。そして動かすのは僕らなの。横並びで胡坐と女の子座り。コントローラーを持つ。
今度は対戦ではなく、競走なの。できるだけ情報を伝えるのなら、機械はレトロなもので、ファミリーコンピューターだ。それはそれは、僕の知らない世界の機械で……
「……なっ、
「何とか動かし方はわかったけれど……
僕はね、レースとシューティングゲームは苦手なの。それにこの機械……。
「まあまあ、そんなに膨れるなって。
それより結構いけてるじゃないか。俺の横に並んでるし。千佳と一緒にやったら楽しいかなって思って、モリオカート。おかんとじゃ……勝負にならないから」
語尾が少し小さな声。それに、顔を少し赤らめて……
だけれど僕は、そのような太郎君の仕草とは違ったような答えを……
「太郎君、モリオカートも得意なんだね」
「いやいや違うんだ。
……えっと、その、おかんが上手すぎて、俺じゃ勝負にならないんだ」
で、思わずプッと……
噴き出しそうになった。危ない危ない、笑っちゃダメだね。……まあ、僕も初めてだから。あれ? 初めての僕と並んでいるということは、つまりその、僕より苦手なの?
と、そんな問いは御法度で、僕は只々、太郎君のカートに合わして走る。今日はまだ雨がシトシト日曜日の続きなの。それが屋根を打つ音が高まっている今時分。
二人寄り添いながら一つの画面に集中する。いずれ到来するウメチカ戦に備えても、僕らは一緒だ。なぜなら、太郎君のパートナーは僕だけなのだから。
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