第四三三回 それでも、本格的にはGW明け。


 ――学園もお休みに入るから。不要不急の外出自粛のゴールデンウイークに。



 それは明日から。


 今日は四月末で、その前日。五連休の前日で、一日だけのクラブ活動に励む。


 芸術棟の二階の、その奥……アトリエという場所に葉月はづきちゃんはいる。そこは森林浴も楽しめそうな、まるでガラス張りのバルコニーみたいな場所。かつては、この場所で僕も梨花りかもモデルをしていたの。十三歳の肖像。今はもう十四歳……十か月も近く。


 その少し離れた場所。……ソーシャルディスタンスの三倍ほどの距離を保ちつつ、見守る瑞希みずき先生。葉月ちゃんが描いているものは、今は風景のデッサンを繰り返す。



 そんな時間……


 色づくのは、やっぱり夏。そんな気がするの、キャンバスに。きっとこの風景にも、人物が入る……という予定だ。そう葉月ちゃんは言っていた。物語という大いなる柱に、骨組みまでも描かれる。その段階を繰り返している。定まればプロットが発生するの。そしてキャラが色付けを始める。……そうだね。僕も学ぶことは多いの、葉月ちゃんに。


 エッセイも、また物語。

 僕らのリアルを伝えるのだから、大いなる物語だ。



 葉月ちゃんは、まだ助走段階だ。ブレザー制服のままスケッチブックに描いている。ごく普通の光景に見えるだろうけど、それが葉月ちゃんの普通ではないの。令子れいこ先生の直伝のスタイルとなる。全身で、肌で感じる……纏うものなき全裸。それは令子先生が薦めたり教えたりしたわけではなく決して、見様見真似みようみまね……というわけでもないけれど、令子先生を見て葉月ちゃんが学んだスタイルだ。絵との一体感を感じると言っていたの。


 風景とも溶け込んで、仲良くなれるの。


 それに何よりも、お肌は基本色であり明暗も、自分の裸体を基準としているそうだ。



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