第四二九回 風に乗って、自転車にも乗るの。
――そして貴方の背中にしがみつき、夢の彼方まで。
「って、家に帰るんだろ、
「あっ、そうだったね」……と、僕は今、
――初恋。
紛れもなく初恋なの。遠い日に出会った頃から、今も尚。
ギュッとすると響く……太郎君の鼓動。トックントックン……僕の胸も高鳴って、
「千佳、あんまり密着するとな、胸……当たっちゃうんだけどな」
と、太郎君は声にする。オブラートに? 言いにくいのもわかるのだけれど、
「……ばか」
と、僕は顔が熱くもなりながら、照れ隠しにもならない台詞を零した。
そしてふと、
「……宣言、発令したばっかなのに、僕らは思いっ切り密で、それに二人乗りだから、見つかっちゃうと思いっ切り怒られちゃうね、おまわりさんに」
「そこは俺と千佳の仲だから。マスクもしてるし、このカントリーロード。俺たち二人だけの貸し切りなんだから、今だけ大目に見ても大丈夫だろ?」
「ウフフ……そうだね」
「何だ何だ? 急に女っぽくなって」
「って、女の子だよ、僕。……でも、今日はどうしたの?」
「久しぶりにな、千佳と℮スポーツやろうと思ってな、来ちゃったんだ」
……と、それが理由だ。
太郎君と℮スポーツするのは久しぶり。中等部三年生との両立が颯爽と始まる予感。
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