第四一〇回 とあるリサーチ。急なの。


 ――所謂、ベテランの先生。瑞希みずき先生よりも遥かに。その様な風格を持つ。



 もしかすると、少しばかり遠い記憶の中、瑞希先生が言っていた『仰げば尊し』の我が師という御方が、これから僕らの担任になるこのお方? そして自己紹介を。


 ブラックボードに、

 大きくも力強く、その氏名をホワイトのチョークで書く。……書いたのだ。



 漢字三文字。――早坂はやさかみつぐ


 年齢は、プロ野球にも通づる、可奈かなの大好きな野球選手の背番号と同じ五十一。九月の二十一回目がお誕生日なの。……そう、可奈は教えてくれた。僕と梨花りかにも。


 誰からかの情報だって?


 それは女の子には秘密が多い故に、な・い・し・ょ。と、少し艶っぽい声で言いたいところだけれど、僕には察しがつくの。その情報源はね、やはり瑞希先生……と言いたいところだけれど、実は日々野ひびのせつちゃん。コッソリと端末から可奈へ、情報を提供してくれたの。それ故に、端末から端末へと情報を共有。その手段はメール。知っちゃったなら、すぐさま消去と、そう付け加えられる。なぜなら、個人情報だから。


 そして思う。


 ……僕らのパパよりも目上の先生。先生から見れば、僕らは子供みたいな存在。


 何だか不思議な感じだ。例えばこのホームルームだけでも、これまでとは何かが異なる感じがするの。グローバルという感じ……或いは、その言葉以外の何ものでもない感じ。


 そして数学が担当。


 僕は……僕は数学が苦手。でも、でもだよ、決して嫌いではないから。その点、可奈はすごい。数学と理科は得意。PCならもっと。……何となくだけれどね、可奈が早坂先生とは気が合いそうな気がするの。僕は、やっぱり瑞希先生かな。あっ、梨花も瑞希先生に憧れていたのだった。それなら、好みも苦手も基本的には一緒だね、僕と梨花……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る