第四〇九回 思えば長い一日だったの。


 ――とはいっても、まだ始まったばかりなの。始業式は、今これからだ。



 新たなる教室。それだけに此処は新校舎の中。旧校舎の頃とは違ってコンクリートの香りと、そのヒンヤリする体感温度。少し水色っぽい光の加減が集える僕らを包む。


 中等部三年二組。と掲げる表札。

 ソーシャルディスタンスを意識した席の間隔だけれど、また僕らは一緒。


 梨花りか可奈かな、僕の席の両サイドにいる。……これからも、ずっと。中等部が終わって高等部になっても、三人一緒にいたい。いや将又、せっちゃんや太郎たろう君も同じ学園、同じクラスで卒業まで。きっと、僕らの本当の卒業は、高等部三年生の終えた時。


 だから、

 だから中等部の卒業式では、まだ泣かないの。



 あっ、そういえば、


 僕らの担任の先生は? まだ知らないままだ。葉月はづきちゃんと怜央れお君の担任の先生が瑞希みずき先生ということはリサーチしていたのだけれど、自分たちのことを忘れていた。それが証拠にだね、同じ教室にいるクラスの面々のことも詳しくは知らず、初めての面々。


 同じ学級は二クラスしかなく、一クラスが二十四人という少数。

 それなのに知らない子が多く、あまりにも情報が少なすぎるの。


 なら、ジャッジメントにも影響する。三人で協力して情報網を築き上げなければ。尚且つ芸術部も充実、やることが多数なの。……だからこそ、せっちゃんの知恵も拝借。


 この春休みで、僕ら女の子四人組の絆は固くなったの。

 身も心もとろけ合う仲にまで進展を遂げた。恥ずかしくもあったけど、そう確信。


 そしてアマリリス。始業のミュージックだ。


 担任の先生が姿を。その姿を現した。メッチャ長身で……百八十五ほど。スラッとした容姿。髪は……やや白く男性。以前は高等部の……な何と、教育指導部の主任さん。



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