第三五二回 ジャッジメントは身近にあるの。


 ――そうなの。それは日々野ひびのさんの言葉。その元は、瑞希みずき先生のお言葉。



 僕にはすぐわかった。……ある先生が誰なのか。そのために瑞希先生は、僕らの学園から、僕が転校する前にいた学校……市立天王てんのう中学校へ移動になった。


 あくまで、僕の想像だけれど、


 きっとそう。……そのことを知っているのは、日々野さんもそうだった。


「……せっちゃんでいいよ」


「えっ?」


「あっ、せつでもいいけど、日々野さんじゃ堅苦しいし、霧島きりしま君も。……堅苦しいのは学校だけで十分。って、さっき可奈かなちゃんにも言ってたの。だからね、……」


「せっちゃん、よろしくね」


「じゃあ改めまして、千佳ちかちゃん、よろしくね」


 交わす笑顔と握手。また新しいお友達ができたの。……思えば、エッセイを始めてから変わったの、僕の毎日が。それ自体が既に曇天返しと、そう思う以外になかった。



 ……じゃあ、もう知っているね。


「僕なの。……その、不登校になって転校した子って」と、それは言葉に。


梨花りかから聞いたよ。それもさっき。……ビックリしたけど、梨花が一人っ子と思っていたから。……大変だったよね。辛かったよね。頑張ったんだね、精一杯に戦ったんだね」


 今日、初めて会ったのに……

 寄り添ってくるの。心に……上辺では決してない、涙誘われるほど……


「違うの、逃げただけなの。とっても弱虫だから……」


「ううん、勇敢だと思うよ。逃げるのも勇気がいるのよ、我慢する以上に。それにね、自分のことを弱虫と言ってる人ほど、実は勇気のある人なの。……だからね、千佳ちゃんはもうやってるのよ、ジャッジメント。皆に勇気と元気をプレゼントしてるんだよ」



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