第三四四回 すると、そのあと……。


 ――お話はというよりも、お電話はまだ続いている模様で、



「いいのかな? 今の僕にそんなこと言って。

 このお姉ちゃん思いの優しい妹が、今必死で勝利目指して時間と戦ってるお姉ちゃんのために届けてあげようと思ったのに。……でも、そうだね。ただでとは言わない」


 と、言いながらも……

 僕は可奈かなの顔色を窺う、この瞬間でさえも。


 何とか、何とか伝えてあげたいの。可奈の想いを……でも、どう言うの?


『じゃあ、苺クレープ。それならいいでしょ』


 と、梨花りかの声が聞こえたその刹那、可奈がスマホを取り上げた。僕の手から、僕のスマホを。さっきまで梨花とお話していた、そのスマホを取り上げた。そして、


 ――無言のまま、切った。



「……ばか」


 と、ポツリ……呟く可奈。ポツリポツリ……と、零している涙。


 僕は、そんな可奈に何を言ってあげたら……と、思いつつも、定まらぬ心でも僅かばかりの勇気でも、そっと手を差し伸べようとしたら、


「あのバカとってめてやらんと気が収まらぬわ! それにあの派手派手女もお!」


 と、メラメラと燃える闘気を感じ……いやいや、どちらかといえば怨念? そして心配になって来たのか、太郎たろう君の姿も密かに僕の背後にペッタリと。


 お昼も後もう少しの白昼ともいえる光景に、

 ゾクッとするもので……とにかく怖かった。


 バンッと叩く僕の背中、紅葉ができそうなくらいの強度で可奈が、


「ボーッとしてないで行くよ二人とも。やってやろうじゃないの。私たち三人で……」


 と、突発的に……って、いったい何をやってやろうというの?



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