第三一五回 黄昏の空、見える一等星。


 ――そしてスモーキーは、夜の慕情へと誘う。


 走る車。

 その中で僕は綴る、これまでのことを。……これから紡ぐ物語のために。



 走る車は、学園まで迎えに来てくれて、約束通りに僕らの新たなる住居へと運ぶ。走る道程は帰路。学園からの帰り道。僕と梨花りかの新たなる帰路……キロは以前よりも増えた。


 そう思われるけれど、


 ……それでもいいの。僕の家族が十四年の時を経て、今一つになるのだから。血のつながりのある梨花と、パパも。僕とお母さんと一緒に暮らす場所がそこに見える。


 そこには、何台かの車両。


 光るストロボと、カメラ。テレビ局の人と……それに匠さん。


 つまりは、星野家のリフォームも終盤へと……クライマックスを迎える。そして迎えてくれる人がいるの、僕らの身内で。新居の玄関のドア、開けるとね、開けると……


 一気に込み上げてきたの。


 お母さんも、僕が学園へ行っている間、きっとこんな感じだったのかな?

 泣けて、涙が止まらなくなっちゃって、


「お祖母ちゃん!」


 本当に映画のワンシーンのように、僕は胸に飛び込んだ。


 周りのことも忘れて……回るカメラは、この場面を映していた。生まれて……初めてのお祖母ちゃんとの出会い。それは画面でもなく、カメラ越しでもなく、温かい涙をも包むように、温かい胸の中で、優しいお祖母ちゃんの胸の中で……


「おやおや、千佳ちかは本当に甘えたさんだね」


「甘えたさんでもいいもん。……生まれて初めてなんだよ、僕」


 あの時、死ななくて……生きていて良かったと思える瞬間。心が震える程に。ポンポンと、背中を叩くお祖母ちゃんの手……「そうだったね」と、優しいお祖母ちゃんの言葉。



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