第四十四章 ……終わらない。まだ続きがあるから。

第二八二回 それは、あの日の言葉から。


 ――メール?


 あっ、そういえば来ていた。もう何なのよ! というほど。


「……ごめん、見てなかった」


 と、取り合えず謝るけれど、


「ごめんじゃないよ、どうしたっていうの? ウメチカ戦で見せたあの勢いは? あなたのこと見直したっていうのに……何なのよ! あなたがそんなんじゃ、太郎たろう君、いつまでたっても笑えないじゃないの。そんなの私、絶対に許さないんだから」


 美千留みちるは、怒っていた。


 メールを見てなかったことで……はないと、それ以上のことを僕はしてしまった。


 ……三か月。

 何もかもが、止まっていた。エッセイも、℮スポーツも、太郎君のことも……


 ウメチカ戦で交わした言葉。……そのことを思えば、美千留に怒られて当然だよね。それに梨花りかにも。……太郎君とも疎遠になってしまって。何よりも今の僕には、とても葉月はづきちゃんに顔向けができないよ。……きっと怒っているよね、僕のこと。


 何一つ、何もできてないの。


 ……木枯らしのように、涙も枯れたはずなのに、また溢れてくるの。


「ちょ、千佳ちか? ちょと、こんなとこで泣かないでよ」


 と、美千留が言うほど、僕は小さな子供みたいに地面にペタリ。道も大通りで道行く人や通りすがりの人、小さな子供まで視線……こちらを窺い、見ている。


「やめてよ! 何なのよ? これじゃ私がいじめてるみたいじゃない」


 悲鳴にも似た美千留の声。それと被るように声が……懐かしき声が。


「千佳!」「千佳さん、大変なの!」


 梨花と、令子れいこ先生? 何が大変なの? そして、泣きじゃくる僕の手を掴む梨花……


「行こっ、千佳」と、「ごめんね美千留さん、千佳をちょっと借りるね」


 と、息も弾ませながらも、そのままグイッと、梨花は僕を引き上げた。



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