第二六三回 これぞ本当の『腹が減っては戦ができぬ』なの。


 ――それ以外の何ものでもない。僕らは『四駅しえき』と呼ばれる駅に辿り着いた。



 ここでのイメージはピンク。


 小さな映画館では『ラパン三世』が上映する予定だった。そして思い出した。この風景の中で、かつては梨花りかも扮したことのある、そのラパン三世。それは去年の物思う秋のこと、少しばかり寒くなった頃で、梨花が理科から逃げ出したから、可奈かなに掴まってお仕置きされたことを……それでもって思わず「クスッ」と。


 すると、ギラリと光る眼で、


「何? 千佳ちか


 と、梨花が睨む。少し……いやいや、かなり怖い。ハンバーガーも食しながら。

 ビクビクしながらも、僕は、


「コンビニじゃなかったの?

 マクド……しかもテイクアウトで。学園まで待てなかったの?」


 ここは学園ではなく未だ辿り着いてもいなくて、駅の待合室で、……ポテトもバクバク食しながらゴクゴクと、豪快に飲み干すコーラー。周りはこちらを見るけれど、


 それでもお構いなしの梨花。


「待てないよ。マクドって出来立てが美味しいんだよ。

 ほらほら、前に可奈と一緒にここで食べたじゃない、あれがいいの。……とか何とか言いながら、千佳だってガツガツいっちゃってるでしょ。みんな見てるよ、僕たち……」


 本当だ。梨花だけではなく……

 目立つ、僕まで目立っちゃっている。



「こうなったら……一蓮托生ね、梨花」


「そうそう、何があってもUターン禁止だからね、千佳」


 そうなの。ここにヒントがあったのだ。二十四日のイベントで必要なことが。



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