第二五四回 さあ! その顔を上げて、背筋もピーンと。


 旧一もとかずおじちゃんが見守る中、


 僕は満ち溢れる爽快感の中で、シャワーから、浴室から出たの。……まだ朝も早く、時計の表示も五時三十分。タオル一枚どころかすべて開放した、裸のままでお部屋まで、最近変わった六畳の部屋。窓の隙間、カーテンを開ける光とコラボした夏の風……


 素肌に受ける。とても気持ちよく。

 パパもお母さんも、まだ眠りの中。


 誰も見てないから、……と、思いつつも、旧一おじさんが見守っているの。



 ――いいの。

 おじさんなら。


 ちっさい頃は、パパと一緒にお風呂に入った経験もなかったから。ティムパパや、新一しんいちパパと入るのも、恥ずかしいけれど、おじさんなら大丈夫。……僕のこと、今までもずっと見守ってきてくれたのだから。何となくだけれど、わかるの。



 ――生まれた時からだね。


 或いは、お母さんのお腹の中にいた時からかな?


 そうなると、僕と葉月はづきちゃんは深い繋がりがあると思う……。それはそれは、梨花りかとの繋がりも深いように。お母さんのお腹の中に、一緒にいたのは梨花だから……


 お腹を見ると、


 今なら一糸まとわずだけれど、……命の尊さ、神秘的なものを感じ、胸いっぱいの感動を覚える。いつかは……いつかは僕も、お母さんになる。将来このお腹に宿る子の。


 お腹を擦る、感触も。


「ちょっと千佳ちか、裸で何してるの?」と、聞こえる。振り返ると、


「お、お母さん」……だったの。恥ずかしかったけれど、そっと心の中で、


 心の声をもって、――生んでくれて、ありがとう。と、そっと言ったの。

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