第四十章 本当の『ジャッジメント』とは?

第二四八回 その前に、まずは……


 並んで立つ。芸術棟の入口。


 まるで病院や図書館のようなガラスの入口。その向こうに広がる青い世界ブルー・ワールド



 吸い込まれるような深い色……

 前回さっきの大事件のお話も気になるところだけど、笑顔で迎えてあげなきゃ

ね。


 すると、車輪の音。静かな場、静かな刻に響く。


 笑顔には笑顔。僕らと対面する側も。……車輪の音は車椅子の音。葉月はづきちゃんの乗る車椅子を令子れいこ先生が押している。僅かな日々のはずだけれど、久しぶりのような感覚だ。



 慣れ親しんだ様子の二人の息遣いが、その証拠。


 僕には、わかるの。二人がどの様に、共同作業していたのか。……それはね、葉月ちゃんのポエムが語っていたの。ペンネームが『葉月』なだけに『葉月、ポエムを綴る』というタイトルで『書くと読む』に連載している。僕と梨花りかの自主企画に参加中だ。


 すると何だろう? まじまじと葉月ちゃんが見ているの。


 ――太郎たろう君を。まさかまさかと思う僕をよそに、太郎君は葉月ちゃんの傍まで歩み寄るの。……またもやドギマギ。それは嫉妬ジェラシー? 瑞希みずき先生ばかりか葉月ちゃんにまで?


「君が葉月ちゃんだね」


「……はい」


千佳ちかから聞いてるよ、

 まあ、頼りない先輩だけど、可愛がってやったってな」


「ちょ、ちょっと、太郎君……」


 カーッと熱くなる、僕のお顔。葉月ちゃんは葉月ちゃんでクスッと笑うし……その様な中で太郎君は名乗る、フルネームを。「霧島きりしま太郎。以後お見知り置きを」と。


 令子先生はその一部始終を笑顔で見守っている。


 そのひと時が済んだのなら、語らなければならない。その大事件、何があったのかを。



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