第二一九回 ハラハラと夜の慕情……今宵は何処へ。


 それは、彷徨える心……

 それは、部屋の片隅……


 PCを目の当たりに執筆……今日もエッセイを。だけれども、画面と睨めっこするばかり。同じ時間の流れで、そんな心境なのは僕だけではなくて、それぞれのお家……


 梨花りかも、そして可奈かなも、

 それぞれの部屋の中で、きっと心ここに非ずだ。


 今、脳裏で見るものは、


 さっきから心を支配するものは、前回の出来事。令子れいこ先生の翳りのある笑顔。葉月はづきちゃんの思いの行方……僕らに、ううん、僕にできることはなかったの? 子供だから、大人のお話に参加しちゃいけないの? そんな思いが肥大する。……だから、可奈は僕に言ったの。「千佳ちかだけじゃないの。梨花だって、私だって思いは同じなの。信じるのよ、令子先生を。きっと私たちよりも、葉月ちゃんの気持ちに寄り添っているから」


 僕らのしたこと……


 ううん、梨花と可奈を除いて僕のしたことは、信じること。決して他人事や、他人任せにしているわけではない。子供は子供なりに寄り添うとする。


 今宵の向こうには、また明日が。

 平日の朝の模様が、また訪れる。


 目覚めたら、もう朝の光。カーテンの隙間から零れる朝の日差し。一瞬、僕は僕自身の存在を探すの。例えるなら、散らばる衣類。身を包むもの、包んでいたはずなの。


 着たならば、僕は僕自身で……昨日の出来事など、様々な情報が脳内に降りてくる。そのような感じなの。或いは朝シャン後に、僅かならの睡魔で再びの夢の中へ……


 でも、今は着ているの。裸ではなく制服を。


 現実の世界で電車の中、梨花と可奈も傍らに登校しているの、学園へ。朝一番、僕らは窺うの。前回の、昨日の続きの……令子先生の顔色を。この場所で、この教室で。ホームルームで見る、いつも通りの令子先生の満面な笑顔を。――まずは、それがヒントだ。



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