第二二〇回 募るヒントは、募る想いから。


 そして、小さな胸……ううん、トキメク胸。その場所は光沢感のある廊下。


 遠くから近くへ、響く話し声。

 招かれる内容へ、心誘われて……それって所謂。


「こら! 立ち聞きは駄目だぞ」と、ニッコリと。令子れいこ先生は怒鳴った。怒鳴られたのは僕……もちろんそう。このエッセイの作者だから。主人公も兼ねているから。


 あとは梨花りか可奈かなも、


 同じ思いで、同じ場に集っている。



 内容は……やっぱり。


 幾度となく聞こえてくる名詞。或いは人名、葉月という名前。因みに名字は星野ほしの……


 両方とも、両方とも。確かに聞こえた氏名。星野葉月というフルネームが。


 校長室を後にし……もう午後の風。お昼を済ませたお昼休み。歩く歩く歩く緑の香り爽やかな中庭を、僕ら四人で歩く。そして五人となる、もうすぐ。


 ――葉月ちゃんが加入する、美術部に。


 されど美術部の部員は一名。顧問も一名……本当はというと、機能していなかった。自作自演のクラブだったの。だったら僕らは何だ? 可奈と梨花、僕を含めた演劇部で、顧問は不在……同じく機能していなかった。唯一、軽音部だけが活動を再開だ。


 芸術棟の二階を使用している。かつては演劇部が使っていた。まだ瑞希みずき先生が学園にいた頃の、去年の『ふるさと祭り』で劇を行って以来……或いは、まだ瑞希先生が学園に籍を置いていたから? ……顧問がいなかったら、やりたくないの? 部活動。


 所詮その程度のことなの? 僕たちにとって。


 そうも思えるのだ。僕はもう演劇をしたくないのか? それは、それはきっと、梨花がいたから。可奈もいたから。……何よりも、瑞希先生がいたから。


 だったら、芸術部という括りはどお? 美術部も演劇部も輝ける合体をするの。これぞ令子先生が名付ける『部構想』というものだ。或いは『天下統一』ともいえるだろう。



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