第百七十八回 もうこれは、ただのバトルではなくて……なかった。


 ――それこそが、僕のファイナルアンサーだ。



 梨花りかは、僕の目の前に……


 天使の歌声を弾ませて、天使の微笑みも兼ね備えつつも。



 ……そして、


『このゲームの映像は、何のためにリアルなのか?』――その答えを、僕はこの会場の中心で、初陣による繊細なまでの集中……そのための脱力により、リアルな僕も、太郎たろう君にお姫様抱っこ……されている。甘えるように身を寄せながらも、叫ばず答える。



 過去には、もう戻れないように……


 人の命もまた然り。……リセットできない思い溢れて、このウメチカ戦で使われているゲームソフトは、ゲームであってゲームではなく、あくまでも℮スポーツなの。


 スポーツには、リセットはない。


 日々精進の結果なのだ。コンティニューの次はコンティニューで、昨日から今日、今日から明日なのだ。さっきも零したのに……また。ふと落ちる涙……



 そこで画面が切り替わる。


 この会場にいる人々が注目する中で、……もちろん大画面も含めて、梨花の歌うその天使の歌もクライマックスに差し掛かったのか、フォルテッシモの域で、その渦中をお姫様抱っこされながらハラハラと、涙を零す僕と、それ以上に涙を流しながらも、僕をお姫様抱っこしている太郎君。……察しの通り流れる字幕に、リアルの僕らが映っている。


 泣き顔だから、

 ちょっと恥ずかしいけれど、満面な笑顔になれる。その中を、導かれる人が一人。


 歩いてくる。こちらを見て近づいてくる。男性で、このゲームソフトを作った人。

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