第二十九章 ――ウメチカでのミラクルな四連休。

第百五十七回 まずは、あり得ない再会。


 ……それは起きた。


 開催前、三十分ほど前に起きたのだ。――場所は、もう脳内を流れる出陣のテーマが終盤に差し掛かる頃、現地……ウメチカ戦が行われる会場。その片隅で……


 そこに集う人々は出場する人ばかりではなく、小説サイトで例えるなら、書き手だけではなく読み手もいるってこと……それに、ここは『ドバシ・カメラ』のイベント会場でもあると同時に、ゲーム機や模型などで飾られる売店も兼ねている。そこで……


星野ほしの


 と、声を掛けられ……聞き覚えのある声。僕は振り向く。今はもう『梅田うめだ』だけど、どうしても振り向いてしまう。あっ、傍らには梨花りかもいて……って、僕とほぼ同時くらいに振り向き、向き直って、向かい合わせになる……声をかけた女の子と。


 その女の子だけではなく、もう一人の女の子も、男の子が二人……


「あれれ? 星野が二人?」


 と、それもそうで……この子たちは、梨花とは初の顔合わせ。それでもって梨花も、この子たちとは会ったこともなく「星野」と声を掛けられたので、驚きを隠せず、


千佳ちか、この子たちは?」

 と、梨花は僕に尋ねる。この子たち四人の前で……


「あっ、こっちね、こっち」と、僕に声を掛けた方の……つまり神崎かんざきさん。前の学校でスクールカーストの頂点にいた子。僕をいじめていた子……


「へえ、すっかり垢抜けてるじゃん。転校した先の学校は楽しいのかな?」


「そんなにビビんなくても、もう……」


 そこから先の声は、僕には届かない。キーンと耳鳴りで遮られる。……名前は忘れたわけではなく言いたくなく思い出したくないだけ。――それでもフラッシュバックで、学校へ行きたくなかった雨の日が蘇る。その男の子二人……野々宮ののみや君と綾乃あやの君は、僕に性的な乱暴した。神崎さんともう一人の女の子……日野ひのさん。僕を冷たいコンクリートの上に押さえつけながら……。僕は神崎さんの手を振り解いて、口を押えて走り出した。



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