第百四十四回 うん、もう大丈夫だよ。


 ――と、梨花りか。ともに歩く帰り道では、もうすっかり体調もよくなって、



 それどころか、う~む、いつもよりも何だか……元気になったみたいで、傍らの僕よりも可奈かなよりも遥かに、お元気でボール……例えるなら毬のようにスキップスキップで、


「梨花、本当に大丈夫なの?」


「無理してない? 私が昨日……『意気地なし』なんて言ったから、あなたに理科の勉強を無理強いしたから……ホント強がってるなら……」


 僕と……僕以上に心配そうな趣の、少し涙目の可奈が、僕も交えて昨日、梨花も一緒にお勉強会を開いた時のことを、その時の発言を気にして、今も……


 でも、クルリと向き直って、


「もう、可奈くどいよ。

 この後は、ほら、僕らのお誕生会。ケーキが待ってるんだよ。元気になるのは当たり前じゃない。七月六日の本当の誕生日は、僕にとっては初めてなんだから」


 と、梨花は満面な笑顔で言ったのだ。


 始めはケーキのこと。……そっちかいと思ったのだけれど、

 その言葉は深くて、梨花が健気に思えて、とても強い存在にも見えて、


千佳ちか、楽しもうね。

 あなたと同じ初めての誕生日。どうぞよろしくお願いします」と、梨花は深々と頭を下げて……下げるから「あっ梨花、そんな改まって……」と、僕が言うと、思わず言葉が漏れると――「これからもよろしくね、千佳」と、顔を上げた梨花は、笑顔で……


 初めて見るような最高の笑顔で、僕を見るのだ。


 だから、だから僕も……「不束な妹だけれど、よろしくね、お姉ちゃん」


「最高の、可愛い妹だよ、千佳」


 というわけで、ここは帰り道。そしてお家から近い方の駅から出たばかりの……つまりは『最寄りの駅』のこの場所で、場を気にせず梨花に、ぎゅっと抱きしめられた。



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