第二十五章 今再び、アクリル絵を描くプリンセス。

第百三十一回 そのモデルはこの僕……ウメチカだ。


 ――そう。ウメチカ。


 あくまで梅田うめだ千佳ちかだ。今現在の僕だ。一昔前の星野ほしの千佳では決してない。……そのことも含めて、令子れいこ先生は僕をモデルに選んだのだ。その上で今一度、僕は問う質問する。



 例えるなら、こうだ。


「僕には、僕とソックリな……それどころか見分けも困難な、瓜二つの双子の姉がおりますけれど、あの……そのっ、大丈夫なものなのでしょうか? 一応ここは学園内で、僕は生徒で……あなたは先生で、例えば、この絵のように……」


 と、指したのは、

 ……そう。指したのは、


 ビッグな窓から零れる……というよりも照らされるナチュラルな光、その影響で様々な色彩にも順応する白い壁、まずは。そこから僕の視線や指先をヒントに、矢印等の線を引きながら追いかけるとね、五十号のキャンバスが二種、各々その中に描かれている泉と呼べるその場所で、生まれたままの姿で水と無邪気に戯れている天使たち。



 ――その天使たちのお名前は、瑞希みずきちゃんと令ちゃん。


 察しの通りだけれど、かつて二人は美術部の部員さん。そして、このアトリエは令子先生の……当時は令ちゃんのセカンドルームでありながら、列記とした部室でもあった。


 そしてその絵は、お互いがお互いを描いたもので……つまりその……


「そうねえ、本当はこの様に描きたいんだけど、

 まずは君が……千佳さんが、本当の意味で笑えるようになることからだね」


 って、それって……


 でも、その言葉の一部始終の一遍も、令子先生の満面な笑顔は崩れることがなかった。


「……はい」と、もうその言葉しかないようだ。――どうしてなのだろうか? 何となくだけれど、令子先生には誤魔化しは通用しないようだ。心の中を見られているようで。



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