第二十二章 ……そうだね、まず八万文字から。

第百十三回 思えばいつも、一人じゃなかった。


 ――ふと落ちる涙は、とても温かくて、


 それと同じように……温かな眼差しは、僕を見守ってくれていた。



 例えるならば、この古時計……


 傍らには写真。旧一もとかずおじちゃんが見守ってくれている。……ごめんね、あれほど応援してくれた上に、憧れのアットホーム風に送り出してもくれたのに……駄目だったの。いじめのことを思い出しちゃって……保健室、結局は何もできなかった。



 ……そうなの。ここはお家。窓の景色は夕映えにキラキラお星様。


 僕も昔は、旧一おじちゃんと同じ『星野ほしの』――何となくだけれど、あの日のプラネタリウムでの、梨花りかの零した涙の意味がわかってきたような、そんな気がしたの。


「……ごめんね」という僕の言葉に、


 太郎たろう君は「気にするな、ドンマイだ。お前は決して負けちゃいないからな」……そうだね、旧一おじちゃんも、太郎君と同じことを言おうとしていた……そう解釈。


 太郎君だけではなく、梨花も可奈かなも一緒に……令子れいこ先生と瑞希みずき先生は、自分たちのお話を交えながらも、僕にエールを送ってくれる。それが、ふと落ちる涙だった。



 瑞希先生は僕と同じように、左の手首に一生残る傷跡……


 令子先生は僕と同じ十三歳の頃……もうすぐ十四の誕生日を迎える前に心臓の手術。

一時は助からないと思われたけれど、奇跡的に一命を取り留め、回復にまで至った。


 左胸に一生残る傷跡……だけれど、今ではニコちゃんマークのような笑顔。


 ――何よりも、みんなが笑顔になっていた。


 明日も登校日。……きっと、ここからはもう笑顔で登校できる。


 その思いを胸に秘め、僕はまたエッセイに取りかかる。『ウメチカ』で初のコンクールに挑む。七日に応募締め切りだ。まだ少し遠いけれど、八万文字以上を目指している。



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