第九十三回 そして本日は、令和二年五月三十一日の日曜日。


 ――という具合に、少し未来のお話になるのだけれど、



 明日よりは水無月……


 緊急事態宣言も解除となって早一週間が経過した本日が、このお話の舞台になる。


 そして場所は、前回も触れてはいたけどプラネタリウム……


 詳しくは消防署の裏手にある図書館。その内部に位置している。……だとしたら、中央図書館張りに広く、大きな場所を意味する。――まあ、その様な感じの場所となる。



 もう辺りは暗く、


 淡々たるナレーション。僕らよりも二十年ほど年を重ねたと思われるような、お姉さんヴォイス……よくよく響き渡る。夜を演出する天井、瞬くお星様とマッチングする。


 その模様を目の当たりにする。

 僕ら三人、横並びで座席に着いている。僕と可奈かな、その間には梨花りか


 始まりから三分が経過で、鼾や寝言の類は……


 ええっ? 僕の方が夢でも見ているのかと思えるほどに……聞こえてこない? そう受け止める頃には、もう七分が経過していて……梨花は僕以上に、いや、お星様が大好きな可奈でも敵わないほど、もう集中して、見入っているような趣だった。



 ……それだけではい。


 それだけではなくて、梨花は涙を零していた。……まるでラブストーリーの、映画館でマジ泣きしちゃう乙女のように。そして手には、純白なハンケチも握られていた。


 そう思っていながらも、


「梨花、お腹でも痛いの?」と、訊いてしまった。


「ちょっと千佳ちか、この場面でそれはないでしょ?」と、可奈が口を挟むけど、


「ううん、何だか映画みたいに切ないの……」と、乙女たる趣で、梨花は答えた。



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