第五十二回 雨の日の訪問者。


 ――そう、しっとりと窓の外は音階奏でる雨。妙に綺麗なメロディーライン。



 マンデーモーニングを迎えるのだけど、休校になって以来、メリハリはない。……それでも五時四十五分起床! それは、お母さんの起床時間に合わしているからだ。


 お母さんがお仕事へ出掛ける時間は、早朝の類だ。


 パパ(ティムさんの方)は、

 ……まだ眠っている。だから台所で、お母さんと一緒に朝食を嗜む。その最中の身支度などの慌ただしき刻に、インターホン? ……やはりインターホンが鳴り響いている。


 ドラマチックな展開、あり得ないと思うけど、

 ――それでも玄関へ。短き距離なのに駆ける、慌ただしきはずのお母さんまで……


 開けるドア。白き眩い光が差し込むイメージ。



 ――梨花りか! と思いきや、


智美ともみお姉さん……」「それに可奈かな……」と、お母さんと僕の順をもって、今、目の当たりにする人たちの名を声にした。続けて、僅かなる間を置いてから、


「どうしたの?」

 と、僕ら親子の息ピッタリなハーモニーを披露。……ではなくて、


 ――お母さんのお姉さん、藤岡ふじおか智美さんは可奈のお母さん。大富豪の令子れいこ先生の大きなお家で行われた三月三日の『ひなまつり』のパーティが、初めての顔合わせだった。


 可奈が曰く『スパルタママ』のイメージとは程遠くも、スポーティーなイメージ。姉妹なだけに、お母さんと似て……美人。キュート寄りの美人で、


「朝早くごめんね、少しばかり千尋ちひろに話があるの。職場まで送ってあげるから。……それからね、可奈は千佳ちかちゃんに、何か大事な用事があるみたいなの」と、言って、


「千佳、梨花がね……

 梨花が大変なの。わたしでは駄目なの、お願い……」と、可奈の言葉、胸深く……。



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