第四十一回 ……前回の補足も含めた追記。


 ――と、いうことで、


 四畳半の僕の部屋で、前回のエッセイが鮮やかに表示されている僕のNPCノートパソコンの画面を見て梨花りかが、「もう更新しちゃったの? 話が飛躍してて意味わかんないよ」……と、怒るものだから、僕は急遽、このエピソードを執筆する運びとなった。



 その執筆は、梨花も手伝ってくれる。


「お願い」

 と、甘えた口調をもって僕は甘える。妹の特権をフル活用する。


 卓袱台の上、一台のNPCに向かう僕たちを、『木に上に立って見る』というイメージのように、お母さんは見る。今はもう……見守るといっても過言ではなかった。


 そして、暫しの間……

 時間にして一時間、ようやく執筆も終盤を迎える。


 沈黙……いやいや、聞こえるのは僕の呟き、梨花の呟き……二人合わしても、呼吸ピッタリな、あくまで二人一役の独り言。その末に、またはその果てに、


「……執筆って大変なのね、いつもそんな感じなの?」

 と、独り言のようだけど、決してそうではないお母さんの質問に、


「うん、まだスムーズな方だね」


「そうだね、梨花が手伝ってくれたからだよ」


 との、二人の会話をもって答えた。

 そしてフッと……または「クスッ」と、そのような表現をもって、


「二人とも手伝ってくれるかな? お母さんの初めての執筆……ブラインドタッチもできないし、PCもあまり使い方も知らないけど、いいかな? 千佳ちか、梨花ちゃん……」


 と、お母さんは頭を下げる思いで、そう言ったのだ。僕らに……。


 もう去年の夏とは違う。違うんだ。今年の夏はきっと、お母さんと、これまでになかった楽しいイベントを、梨花も一緒に、きっときっとエンジョイできる、そう信じる。



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