第三十九回 千佳、大地に立つ。


 ――とうとうやってしまった、このサブタイトル。


 流用してしまったのだ、『りかのじかん』でもあったあった。もちろん梨花りかバージョンだけど、今はもう懐かしき日々。あの頃は外出に対する自粛もなく、自由だったから。



 その自由が怖くて僕は、

 自ら手首を切ったことがあった、あの浴室で……去年の夏休みの最終日。


 そして僕のお友達……ううん、お姉ちゃん、


 僕よりも大泣きで、僕のことをもの凄く怒った。……それがきっかけで、僕は新たなる現実の世界を、信じることができるようになった。そして、その梨花が来てくれるの。



 ……と、その前に、


 今現在いまげんざいは『大地に立つ』といっても、土俵に立つという意味。正確には『立った』のだけど。……まあ、まずは僕の、僕とお母さんの生活の時間割。最新バージョンだ。


 そのお話も、ほんの少し遡る……

 お母さんが宵の御勤めを辞めたのは、パパと結婚してすぐ。このエッセイの『新章たるウメチカ!』では第六回の前くらいかな? 第二回から第五回までは回想だったので。


 ――つまりは、第五・五回。


 そして同時期に禁煙。……ここ三か月ほど喫煙していない。それと比例して飲酒も減った。ビール瓶、または空き缶ゴロゴロ、一升瓶も合わせてだけど、足の踏み場もないくらいだったのが、今はホッと一息……晩酌を嗜む程度で、パパも一緒に。


 パパが来る前とは、

 もうすでに生活は変わっていた。……僕が幼い頃、五つの頃に夢見ていた世界。


(もう夢じゃないんだよ、信じていいんだよ)と、脳内で囁く、それはもう一人の自分。

 ポロポロと零れる涙……最近、よく泣くようになって、


千佳ちか、もうすぐ梨花ちゃんが来るから泣かないの」と、お母さんが言った……。



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