第八回 もう一つの『りかのじかん』……承の編。
――舞い散る粉雪、中へ入れば温かいお家。
「入らないの?」と、
「どうぞ」と、ドアも丁寧に、開けてあげる。
「ありがと」……小さくとも、和むような声。ほんと憎めない子だ。
此処は私の鉄道『最寄りの駅』から近くの古びたアパート。その二階にある一室が、僕のお家。……そういえば、僕のお家を梨花が訪ねるのは、初めてのことだった。
見慣れた靴、それはお母さんのもの。
あれ? だ。見慣れない靴……革の靴が一足ある。先客のようだ。
――意識すれば聞こえるお話の内容。お母さん以外に男の人の声。……何やら調べていたそうだ。探偵に依頼でもしたのだろうか? この頃は推理ブーム、小説の世界だけではなくTV、刑事ものでさえそうなのだ。……聞き覚えがある声だと思ったら、
男の人の声は刑事さん。
とはいっても親しみのある僕の……いや、梨花にも関係する親戚の
「……本当に?」と、まずはお母さん。
そして善一さんは、
「……ええ。二〇〇七年七月六日、一卵性双生児が……あなたと
そこから先、ノイズが入るような感覚で、聞き取りにくい。……今聞いたことは一体何なの? と思っていたら、ボソッと物音が、……梨花がリュックを落とした音。
「あっ、千佳なの?」と、お母さんの声とともに足音近づく、やっぱり二人分、善一さんも一緒。そして顔を合わせる刹那、梨花は……。
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