番外編:ペ〇ング焼きそば獄激辛

~流されるとこうなる~


 みさき がYou〇ubeを見ている。

 そしておもむろに動画を画像で取り込む。


 「これ買って!!」


 いきなり駄々をこねた。

 なにかと思ってみてみれば「ペヤ〇グ焼きそば獄激辛」とか言うやつが映っている。


 「こんなの限定商品だろ? うちみたいな田舎であるかな?」


 「無ければネットで買ってぇっ! どうしても食べてみたい! みんな悶絶するほどだって言ってるし!!」


 好奇心は猫を殺すとはよくいったモノだ。

 とその時は思っていた。



 * * * * *



 ポイント二倍デーなのでウェル〇アに衛生用品とちょっとしたお菓子、頼まれたグミを会社帰りに買いに行く。



 ‥‥‥

 ‥‥‥‥‥‥

 あった。


 何だよこの「辛い物祭りコーナー」って!?


 確かに他のウェ〇シアよりここのウェルシ〇の方が何時も変なもの置いてあるので良く来るけど、既に噂ではネットでも高値になりつつあるという「ペヤン〇焼きそば獄激辛」と他の辛い商品が山積みである!?


 目的の品を手に取る。

 税込み200円ちょっと‥‥‥


 早速二個買う。



 * * * * *

 

 

 「おおぅ! やったーっ! 本物だぁ!!」


 「喜ぶのは良いが本気でこれ食うのか?」


 「勿論! さあ、早くお湯沸かして!」


 私は先に冷蔵庫の牛乳と製氷の在庫を確認する。

 まあ、大丈夫だろう‥‥‥


 やかんでお湯を沸かし、二つとも開けてお湯を入れる。

 待つ事三分。

 湯切りをして激辛と言うソースを入れてみる。


 !?


 既に匂いがやばそうだ!?

 そう言えば激辛MAXだったか以前ものすごく辛いと謳われた商品の三倍辛いとかどこかで書いてあったような‥‥‥


 どっかの赤い大佐かよ!?


 しかし、この香り。

 私は先に氷水と牛乳をコップにそれぞれ入れ準備する。



 * * *



 「さあ、出来たぞ。本当にやるんだな!?」


 「勿論さ! あたしはこれで明日のバイト先でヒーローになれるのさ!」


 女性だからヒロインなのでは? とか思いながらも今は目の前の凶悪そうな焼きそばと対峙する。

 

 過去こう言った辛い物系はことごとく完食し、倒してきた私だ。

 今回も行けるだろう。



 準備は整った。



 私と みさき は食卓で向かい合って座り各々の焼きそばを見る。


 「いいか?」


 「オッケー、何時でもいいわよ!」


 それでは、



 「「いただきます!」」



 私たちはいっせいに焼きそばを箸で持ち上げる。

 とたんに香る危険な匂い!


 「こほっ!」


 「大丈夫か? 匂いでむせてるぞ!?」


 「まだまだぁ! 行くわよっ!」


 そう言って みさき は焼そばを口に運ぶ。

 

 「%$#&%%$っ!!」


 言葉にならない悶絶をする。

 そして氷水のコップに手をかける。

 

 マジか?

 まだ一口目だぞ?

 しかし氷水で間に合わないようですぐに牛乳にも手を出している!?


 私は箸で持ち上げているこの焼きそばを見る。

 見た目は薄味の焼きそばっぽい。

 しかし漂う香りは尋常ではない。


 私はそれを口に運ぶ。



 「!?」



 味的には美味いのだがこの味覚、いや、これは痛覚だ!?

 既に口の周りもひりひりと痛い。

 そしてワンテンポ遅れて舌が「痛い」!


 だがこの程度か?


 私はかまわず二口、三口と進んで行く。

 が、時間差でその口撃はやってきた!


 「痛い」のだ。

 とにかく「辛い」を通り過ぎて「痛い」のだ。



 「はーはー、ちょ、ちょっとタンマ! グミ、グミちょうだい!!」


 みさき は救済処置のグミにまで手を出している。

 一度に二、三粒口に入れて噛んで辛さに耐えている。


 さすがの私も氷水に手を伸ばす。

 しかしやはり「痛み」が引かない。

 仕方なく牛乳にも手を出す。


 「珍しいね、あんたが牛乳にまで手を出すなんて」


 「これは流石に辛いを通り越して痛いだ!」

 

 「そう、それだ! ものすごく辛くて舌がおかしくなる! 辛すぎて痛いんだ!!」


 みさき も納得した感じで残りを見る。

 まだまだ容器には沢山の焼きそばが残っている。


 「こうなったら時間をかけて対処するしかない、まずは焼きそばの温度が下がるように箸で持ち上げたり吹いたりして冷ますんだ!」


 辛い物は温度が高いと更に猛威を振るう。

 だから温度を下げてやればいくらか辛さが落ち着く。


 みさき と私は箸で焼きそばを持ち上げふーふー言いながら冷ます。

 そして再チャレンジ。


 「&%$#$%&っっっ!!!!」


 それでも辛かったようで みさき の額に一気に汗がにじみ出る。

 勿論私は先ほどから汗がだくだく流れ出ている。


 しかし。


 矢継ぎ早に残りを口に運び咀嚼して飲み込み、辛さが襲ってくる前に牛乳を口に含んでしばしそのままでいる。

 こうすると舌に牛乳が絡んで辛さを落ち着かせてくれる。

 おかげで私は完食で来た。

 

 しかし みさき は‥‥‥


 「ま、だだ、まだあたしは負けられないっ! ぐふっ!」


 いや、もうやめとけ。

 麺を持ち上げるがまた戻し、また麺を持ち上げるを繰り返している。


 私も食べ終わりはしたものの胃の辺が辛い。

 本気で辛い物を食った時の感じだ。


 「いい加減あきらめろ、お前さんには無理だ」


 「で、でもぉっ!!」


 「代わりにちょい辛の担々麺作ってやるから。これは人が喰う食いモンじゃなくなっている」


 もう一度そのパッケージの包装を見る。

 閻魔様見たいのが描かれている。

 確かにこれは「獄」激辛だった。


 私も みさき も限定商品とか特別品とか大好きでついつい買ってしまうが、食い物はやはりおいしく頂ける程度が好いだろう。

 流石に みさき の残りの焼きそばがもったいないからと言って私が処分する気にはなれない。

 

 もったいないが今回は仕方なく残飯として処分させてもらった。



 * * * * *



 「ねぇねぇ、これ見て!」


 みさき がまたまた動画を取り込んで私に見せる。

 

 「これ買って! みんなこれ美味しいって言ってる!!」


 「お前な、こないだそんなこと言って痛い目に合っただろ?」


 帰宅して荷物を下ろしながら私はあきれてみさきがスマホで見せるその画像を見る。


 「だってあれは辛いのがすごいってみんなやってたからあたしも気になって仕方なかったんだもん! あ、でも今度のは違うよ、ナタデココ入りのデザートだよ!」


 私は笑っておもむろに荷物からそれを引っ張り出す。


 「どうせそう言うと思ってさっき買ってきたよ。ちょうど今日は『価値ある百円均一Day』だったからな。おひとり様一つまでの卵パックも入手できたぞ!」


 「おおっ! じゃぁ早速そのデザート食べよう!」


 「ちゃんと晩御飯も食えよな?」


 「大丈夫、ちゃんとあんたまで食べれるからね! 今晩も頑張ってね////」


 「うおぃっ!」



 相変わらずの みさき であった。

 

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みさきの餌付け方 さいとう みさき @saitoumisaki

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