十一皿目


 久しぶりにテレビを見る。



 「ねえ、家ってさ、ほんとあまりテレビ見ないよね? N〇Kの代金分くらい見ないと損じゃない?」


 「お前さんはちゃんとNH〇のアニメの部分は見てるじゃないか? あと私は朝のニュースを時計代わりにしているぞ?」


 「おー。そう言えばそうだね。 それよりこの民放の番組なんだけど‥‥‥」


 先ほどから見ているグルメ番組を指さす。


 「あれって本当に美味しいのかな? よく食レポで美味しそうに食べてるけど実際にはそれほどじゃないとか多いよね?」


 今やっている番組は「カレー天津丼」なるモノ。

 しばし みさき と一緒に見る。


 「あ、大阪じゃウースターソースかけるんだ。これ美味しそう。」


 一連の作り方まで公開しているが、秘伝の味じゃないから企業秘密にならないのか?

 うーん、確かに美味そうだな。



 私はおもむろに冷蔵庫の食材を確認する。

 そして炊飯器の残りのご飯も見る。



 「なあ、そのカレー天津丼食ってみたいか?」


 「食べたい!!」


 

 みさき の耳がピンと立ち尻尾を振っている。

 よし。



 私はエプロンをかける。

 さあ、餌付けの品を作ろう!




 本日はこれ。


 <カレー天津丼>


 テレビで見たレシピと言うか、お店の作り方で大体のやり方は分かったし味の想像も出来た。

 ハンバーグや炒め物にいれるS&〇カレー粉もある。

 昨日特価98円卵パックも買っておいたので卵の余裕もある。


 食材を並べていると みさき が寄ってきた。


 

 「でもさ、一回見ただけで作れるの? 食べた事も無いのに??」


 「うーん、大体想像は出来た。ただ少しアレンジするけどね。たぶん似たような味にはなると思うよ? それよりさっきから気になっているのだがなんで下着姿のまま?」


 「へへへっ、うれしいでしょう? 欲情した?」

 

 「食欲だけはあるぞって、風邪ひくから服着ろよ」


 「つまんな~い、先お風呂行ってくるね~」


 そう言って みさき は風呂に行った。

 そういや「お風呂が沸きました~」のアナウンスがしていたっけ。

 

 ちょうど良い、ふろから上がる頃にはちょうど出来上がるだろう。



 1、長ネギ、ちくわ、にんじんをみじん切りにする。そしてボールに入れ準備。豚こま切れ肉も小さめに切っておく。


 2、ご飯に卵を割って入れよくかき混ぜる。そして火にかけておいた中華鍋に油を入れこの卵混ぜご飯を入れる。途端にじゅーっという音がして炒め始められる。軽く火を通して固まり始めたら先ほど切っておいたみじん切りを入れ炒める。そして塩コショウ、コンソメ、中華鶏がらを入れよく炒める。


 3、ご飯がぽろぽろに炒め上がる頃に〇&Bカレー粉の缶を開けカレー粉投入。その後よく炒める。この時点でカレーの好い匂いがする。大体炒めあがったらおわんに盛って形を作ってからお皿に裏返す。



 4、卵をよく溶き、白だし、牛乳少々を入れてよく混ぜる。中華鍋に油、少量のラードを入れて良く熱す。中華鍋の端から油の煙が立ち始めたら溶き卵を入れる。これもじゅーっと良い音がしてふわっと膨らみ始める。それを軽くかき回しながら焼いていく。半熟になったらさっと裏返して反面を数秒焼いてから先程のカレーチャーハンの上にかぶせる。


 5、中華鍋に水少量入れて沸騰したらウースターソースを入れる。醤油、砂糖も少し入れてから中火にして水に溶いておいた片栗粉を中華鍋をまわしながら少しづつ入れていきとろみのあるあんを作る。ちなみに美味しいあんを作る時は強火でやってはいけない。弱火から中火でじっくりとろみを作った方がとろ~りのあんになる。強火だとゴテゴテしただまになり易い。出来上がったあんを先ほどのカレー天津丼にかける。


 6、牛丼屋でもらってきて使わなかった紅しょうがを端に添えて完成!


 っと、野菜が少ないのでカット野菜を小さな器に盛ってプチトマト、ツナ缶のツナを添えてミニサラダも完成。

 食卓に並べるとちょうど みさき がバスタオルを巻いた姿でやってきた。


 

 「おお~、好い匂い! 出来たの?」


 「ああ、ちょっとアレンジしてウースターソースのあんとかかけたけどな。それよりなんて格好してんだよ、はしたない」


 「ええ~? これで欲情しないか? まさか外に他の女でも出来たか!?」


 「どあほうっ! 今は食欲が強いんじゃい!」


 「じゃあ食べ終わったら今度はあたしが食べられちゃうね♪」


 「いいから服着ろよ、飯が冷めるぞ」


 「やばっ! それは一大事!」


 そう言ってその場でタオルをはぎ取り下着をつけていく。

 私はあきれて寝間着で使っているスウェットを持ってきて着させる。



 そして二人で食卓に着く。

 手を合わせて。



 「「いただきます!」」



 みさき は準備したスプーンで早速カレー天津丼を割ってみる。


 「おおー、テレビと同じだ! ちゃんとカレーチャーハンが入っている!!」


 そう言ってみさきはまずはカレーの部分を食べる。



 「チャーハンなのにカレーだ! これ意外と美味しい!!」



 そして半熟が残る卵も一緒に食べる。


 「うん、卵合う。さてと、このあんを付けてっと~」



 ぱくりっ!



 「おお~、今あたしは大阪人の気持ちが分かった! ウースターソース合う! しかもあんかけだからまろやか!!」


 そうにっこり笑ってパクパク食べる。

 私はその様子を見てから自分も食べ始める。



 スプーンで割ってカレー天津丼をぱくり。

 カレーチャーハンという表現がぴったりの味にふわトロの卵がよく合う。


 味はチャーハンなのにカレーの香りとわずかな味が食欲を刺激する。

 もともとカレーライスに目玉焼き入れる事も有るから卵焼だって合わないはずがない。


 

 見事に中華風のカレー卵だ。



 しかしこれが旨い。

 ちょっとチープ感はあるもののがっつり行ける感じが良い。


 あんをつけて食べてみる。


 ウースターソースのわずかな辛みと酸味がとろとろのあんに包まれ優しい口当たりでカレー天津丼の味わいを深くする。



 なるほど、カレーにウースターも悪くない。



 そう言えば実家はカレーの味変でよく醤油を垂らしていたっけ。

 しかしソースも有りだ。



 二人してどんどんと食べていく。

 添え付けの紅ショウガも良いが福神漬けも合いそうだな。

 そう思いながら完食する。



 「これ美味しかった! また作って!」


 ほうじ茶を飲みながらほっとする。


 「結構簡単だし材料さえあればいつでも作ってやるよ」


 「やったー♪」



 そして二人して手を合わせて。



 「「ごちそう様でした」」


 

 笑顔の みさき だったが急に何かを思い出して洗面所へ行く。

 しばらくして戻ってきておもむろにスウェットを脱ぎながら上目づかいでこちらを見てくる。

 そして猫なで声で。


 「ね、早くお風呂入ってね。二階で待ってる、か・ら・ね♡」


 わざわざ歯磨きしてきたのか?

 私は苦笑しながら食卓に置きっぱなしだった猫耳カチューシャを みさき の頭に乗せる。


 最近細くなった腰を引き寄せ唇を重ねる。



 CHUっ💛



 「もう、せっかく歯を磨いたのにカレー味だ!」  


 ふくれる みさき を見ながら思わず笑ってしまう。




 そして今日も笑顔でそ粗末様でした!

 

  

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