五皿目
お菓子棚を見る。
既に全滅。
そしてごみ袋も見る。
大量のお菓子の袋‥‥‥
「いやぁ、何とか体重キープ出来た! うん私頑張った! ご褒美でケーキ買って!」
私はこめかみに指をあて大きくため息をつく。
「ちょっとそこへ座れ」
「ほえ? 何??」
「いいから座れ!」
頭にクエスチョンマークを浮かばせている みさき は大人しく私の前に座る。
「今月はもうお菓子買うの禁止な! ケーキも無し!!」
「え”え”ええええええっ!? なにそれっ! 横暴だぁ! 虐待だぁ!! DVだぁ!!」
本気で手足をバタバタさせて抗議をしている。
「黙れ! あれだけあったお菓子が冷蔵庫の食材より先に無くなっているんだぞ! おまえ、俺が仕事でいない間に何食ってんだよ!?」
「え? そりぁ‥‥‥」
ここに来て初めて危機感を感じた様だ。
みさき の頬を一筋の汗が流れている。
「全く、いいかレンジでチンすれば食えるもの作っておくからそれだけ食えよな! お菓子禁止!!」
「え~っ! 作り置き美味しくな~いぃ!」
「黙れ、とにかく作ったもん以外食うな!」
私はそう言ってエプロンをかける。
餌付け用の品を作り始めよう!
今回はこれ。
<鳥と大根の煮つけ、辛子高菜、糸こんにゃくの甘辛炒め>
これらのおかずはそのままかレンジでチンすれば十分に美味しいものばかり。ご飯とインスタント味噌汁もあればお昼ご飯には困らないはず。
1、安売りの大根を一口大にもみじ切りする、厚さ約一センチくらいに輪切りにして四等分に切るあれだ。人参も同様に切るがやや薄めにしておく。そして水にさらしておく。
2、鶏むね肉を一口大に切って軽く片栗粉を付けてからフライパンで焼く。そしてそのまま鍋に入れてお湯を注ぐ。火をつけ沸騰してきたら かつおだし、いりこだし、みりん、調味料酒、醤油にいりごまを入れて煮る。
3、水にさらしておいた大根と人参を入れてひたひた位までお湯を継ぎ足し落し蓋を入れて弱火でコトコト煮る。
4、チューブおろしニンニク、ショウガをフライパンに少量入れ、調味料酒、みりん、かつおだしを入れて火をつける。各調味料を菜箸で溶かしながら沸騰したら胡麻高菜(100円)を入れる。そして軽く炒ってから水を少量入れる。この時に追加で砂糖、しょうゆを垂らす。
5、煮焼しながら鷹の爪をちぎっていれ、水分を飛ばしながら炒っていく。大体水分が飛んで来たら最後にごま油を垂らしてもう少し炒る。味見をして醤油、ごま油を調整していれる。これを大きめのおわんに入れて一品目完成。
6、55円の糸こんにゃくを袋から出しさっと水洗いしてからまな板の上で十字に包丁を入れる。
7、フライパンに少量のサラダ油を入れて火をつけ、そこに先程の糸こんにゃくを入れてさっと炒める。
8、油と絡まったら いりこだし、白ごま、みりんを入れて更にさっと炒める。そして冷蔵庫の中に残っている明太子を取り出し大体三センチくらい皮ごと切って入れる。この時明太子のつけ汁も一緒にいれる。
9、軽く炒めて醤油、少量のごま油で味を調え二品目完成。これも小さめなおわんに入れる。
10、煮込んだ鳥と大根の様子を見て最後に隠し味のエ〇ラ黄金のたれを少量入れる。ぐつぐつと此処からは中火で焦げ付かない様にかき混ぜて煮詰まったら火を止め蓋をする。これで三品目完成。
「よし、出来たぞ。昼はこれ食ってろな! 高菜と糸こんにゃくは冷めてもご飯に乗せれば大丈夫だし、鳥と大根の煮物はお皿に盛ってレンジでチンすればすぐ食えるぞ」
「うー、分かった。行ってらっしゃい」
みさき に見送られながら仕事に行く。
* * * * *
「ただいま~」
「お帰り!晩御飯!」
「人の顔見るなり晩飯かよ!?」
「大丈夫、半額のカツオのたたきゲットしてきた!」
どうやら買い出しはしてきたようだ。
手を洗って台所に行くとご飯はまだ炊飯器に残っているようだ。
「みそ汁も作っといた! 後お昼のおかずも残っているよ!」
見ればインスタント味噌汁に具材を追加したものが出来上がっていた。
ちょっと味見して隠し味の牛乳といりこだしを追加して過熱する。
みさき はお昼の残りの辛子高菜をテーブルに、鳥と大根の煮物をお皿に盛ってレンジでチンしている。
エプロンをかけてから玉ねぎを切って水にさらす。
ニンニクをスライスして、万能ねぎも切ってからカツオのたたきも切る。
そして水きりした玉ねぎをお皿に敷いてカツオのたたきをのせる。
ニンニクのスライスと万能ねぎを振りかけて付属のたれをかける。
お皿の端にマヨネーズを出して完成っと。
ご飯とお味噌汁もよそって食卓に。
みさきもレンジから鳥と大根の煮物を取り出し着席する。
さて。
「「いただきます!」」
今日は作り置きと みさき が買ってきたカツオのたたきなので夕飯が早く食べられる。
まずはカツオのたたき。
玉ねぎも一緒に箸でつまんで口に入れる。
焼き入れの入った部分の風味に真ん中の生の部分がカツオの味を思い切り引き出している。
一緒に食べたニンニクや万能ねぎ、そして酸っぱいたれの染み込んだ玉ねぎがカツオの生臭さを消してくれる。
二切れ目、今度はマヨネーズもつけて一緒に口に入れる。
マヨネーズがニンニクの辛さを落ち着かせ赤身のカツオにまったりとした旨味を効かせそれを玉ねぎや万能ねぎが彩り、酸味の効いたたれが後味をさっぱりとしてくれる。
「カツオのたたきにマヨネーズって美味しいの?」
「ツナおにぎり好きだろ? あれと同じだよ。濃厚な味わいがしておいしいぞ」
みさき は恐る恐るマヨネーズ付きカツオのたたきに挑戦する。
ぱくりっ!
もごもご‥‥‥ ごっくん!
とたんにうれしそうな顔をする。
「なにこれ、美味しい! マヨネーズ合うんだ!!」
「漁師飯でこう言ったのが有るらしい。魚を知り尽くしている漁師さんのご飯だ、間違いは無いだろう?」
「マヨネーズつけると生ニンニクの辛いのが抑えられてどんどん行けるぅ~」
私は作り置きの鳥と大根の煮物に箸を出す。
まずは大根をつまんで口の中に。
とたんにとろけるように大根が口の中に消えゆく。
うん、味が染み込んでいて旨い!
次いで鶏肉、人参も口に運ぶ。
鶏肉も煮込んでいるのでやわらかくなっているし人参もそうだ。
やや薄味気味にしているのでパクパク行ける。
そして白米の上に辛子高菜をのせる。
ご飯と一緒に口の中へ!
辛さと醤油のしょっぱさ、それに甘みが重りそれをごま油の風味でまとめている。
これがごはんに合わないはずがない!
一口、二口と辛子高菜と一緒にご飯を口に運ぶ。
「あ、それ卑怯だよぉ~、美味しくてご飯進むんだもん! また太っちゃうよ!!」
そう言いながら みさき も辛子高菜をご飯に乗せて食べる。
「あと、糸こんにゃく炒めたのも卑怯! 両方ともご飯が進んじゃった!」
そう言いながら鳥と大根の煮物を口に運ぶ。
「これもおいしかった! 他のが味濃いからちょうどいいよね~ 大根トロトロだし!」
そう言て大根人参、鶏肉と口に運んでいる。
黙々と食事をする二人。
ほどなくおかずもご飯も全部完食!
「美味しかったぁ~、今日は和食御前だね!」
「いや、和食からは少し離れていると思うんだが、ま、いいか」
そう言って私は手を合わせる。
みさき も手を合わせる。
「「ごちそう様でした!」」
たまにはこういったあっさりもいいだろう。
手間もかからず帰ってきてすぐに晩飯が食えるのはうれしい。
そしていつもの笑顔でお粗末様でした!
‥‥‥ちょっとマテ?
みさき が買い出しに行ったんだよな?
私はこっそりお菓子棚を見てみる。
‥‥‥
おい、なんだこの大量なお菓子は!?
「みさきっ!」
しかし みさき は既にこの部屋にはいなかったのだった……
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