第43話・壁
九月三日、体育祭に向けて応援団が初めて全員集結しての練習が始まった。応援団長は
「俺しか応援団長の器いないっしょ!」
昨日転校して来た
「この私、羅羅木亜嵐、らが三つある羅羅木亜嵐は誠に誠に素晴らしき人間です。」
その後五分も亜嵐は自己アピールをして皆に無視され続けた。
「あんた白組だろ? 白組の団長に交渉しろよ」
瑠璃が真顔でそう言った。
「ダメだった!」
「そうかーーーー諦めろーーーー」
亜嵐は瑠璃が応援団長を譲ってくれると期待したが、軽返事で瑠璃によってその期待は途絶えた。しかし、まだ心が折れる事はなく、また教室を出て何処かに行ってしまった。そんな中、風達は体育祭に向けて応援団練習が始まった。応援団の振り付け、応援団の役割の確認、そして瑠璃の考えた小芝居の確認と練習をした。
「小芝居? 文化祭と勘違いしている?」
風達が疑問を持ったが、特別な体育祭にしたい気持ちと、単純に目立ちたいが為に小芝居を応援に融合する事に決めた。
「楽しんでいるようだねぇ~。 何時にしようかな? この学校に来んの」
「あんまり良い趣味とは言えないんではないか?」
胡桃の横には
「先生こそ悪趣味よねぇ。 先生結婚してんのに」
遠には妻の
「先生の奥さんと会ったわよ」
遠は胡桃のそばを離れて、立ち上がった。胡桃はその様子を見るなり笑い転げていた。
時は遡る事夏休みシーズン。麻耶は墓場を訪れた。墓参りを目的として来たのでは無かった。兄の数が弟の
「あの人を知ってるのねぇ。 あの人の学校に転校する事になったと……」
胡桃は麻耶に遠とは以前から知り合いで、遠が勤務している学校に転校する事を伝えた。胡桃と麻耶は世間話で盛り上がっていた。その裏で胡桃は麻耶とはどういう人物かを探っていた。それは麻耶も同じだった。胡桃は普通の子供では無いと直感していた。お互いがお互いを探る中、麻耶が先手を打った。
「貴方はあの人とは深い関係であるの?」
麻耶は胡桃の出方を伺っていると、胡桃は不敵な笑みを浮かべた。
「はい。 別居しているなら、私の勝手ですよね?」
麻耶は怒りを覚えたが、表情に出すまいと堪えて、高らかに笑った。それに合わせて胡桃も高らかに笑った。
「君は分かんない女だな。 いつか妻に殺されるかもな」
遠が高台より刹那高校の方を見ながら、言った。すると、高台の隣にある森林の中から缶が転がってきて遠の足元で止まった。缶が転がってきた方を見ると、そこには
応援団の練習が続く中、数学部の活動も並行して行われていた。しかし、風はもうクタクタで頭に内容が入ってこなかった。算学は数学が心から好きだったが、流石の算学ももう真面に活動する気が失せたと風は思って、算学の様子を伺ったが算学は何故か腹筋しながら数学の問題に取り組んでいた。しかも、そう簡単に解く事が出来る問題ではなく難問大学向けの問題であり、風は一度も問題を解けないどころかその問題集に触れた事も無かった。
「中々面白い問題だ。 俺レベルになるとそういう感情、そういう行動になる」
算学は自画自賛していて、風の顔色を伺ったが風はテキストで顔を隠していた。その時、風は吹き出しそうになっていた。何故なら、算学が問題を解きながら腹筋している様子が余りにも可笑しく、算学の口の周りには算学が持ってきていたチョコレートが付いていて、なんだか眠気に耐えている気がしたからだ。
算学は流石に腹筋は疲れてしまい、普通に問題を解こうとした時、脳に一瞬痛みが走った。その痛みと共に見覚えがない映像が算学の頭の中に写った。
目の前には、男の子が泣きながら怒っていた。よく見るとその男の子は昔の算学だった。昔の算学が自分に叩きまくった。しかし、何の痛みも感じなかった。するとそこに算学の母、
「二人ともこの辺にしておきなさい! 」
「チョコレートいつまで付けてるつもり?」
風が算学に呼び掛けて、算学は我に返った。そして、若干震えている手で口に付いていたチョコレートを拭き取った。
病院にて弥生は眠っていた。弥生が眠る病室に一人の来客がいた。それは瑠璃だった。
「俺は応援団長として、弥生が目覚める為に応援をする」
瑠璃は周りに迷惑が掛からない程の音量で弥生に向けて応援し始めた。弥生は変わらず眠っていて、瑠璃は一通り応援を済ますと弥生が眠っているベット直ぐにあった花瓶にあるエノコログサの為の水を取り替えて、帰ろうと扉に手を掛けた時、一人の医師が入ってきた。
「三毛さんのご友人ですか? 早くお引き取り下さい」
冷たい医師の視線が瑠璃に注いだ。そんな二人の所に亜嵐が向かおうとしていた。
シッπ(シッパイ)!!~永遠に続く失敗だらけの青春恋物語~ ねしちご。 @sitigo
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