第42話・厄介もん転校生

さ「昨日は殴ってゴメンね……何ボケっとしてんの?」

東城風とうじょうふうは登校中、算学数さんがくすうと鉢合わせして、風は算学と目線が合うなり、算学に対して頭を下げた。

「また変な夢でも見たのか?」

「夢? ……んんんん?」

風は昨日の事を思い返した。思い返して見ると風は直接算学の顔を殴ったのではなく、風の部屋にて貼り付けた算学の絵を殴り付けた事の間違いだった。それを風は説明すると、風の予想通り算学はため息をついた。


「で、本当に応援団とやらをやるのか?」

「当たり前でしょ! まぁ、私も乗り気じゃないんだけどね」

算学と風は揃って登校中、猫を追いかける時代遅れのヤンキーの様な風と同じ歳ぐらいの青年を見掛けた。風は少々気になったが、算学はそれ程気になった様子では無かった。




「よーし、二学期の授業が今日本格的に始まるが、その前に転校生がいる。 席に着いていない奴さっさと席に着け」

風達の担任鳴子遠なることおいの言葉により、風と算学は急に心臓の動きが速くなったのが自分達でも分かった。何故なら算学の元カノである八乙女胡桃やおとめくるみが転校して来たと思ったからだ。教室の扉は静かに開いて、転校生が現れた。


「どうもーーーー!!」

教室中静まり、遠は改めて転校生を紹介した。

「転校生の、羅羅木亜嵐ららきあらんだ。 こう見えてとても良い奴だから」

教室中の生徒皆が頭の上にはてなマークを浮かべた。転校生はリーゼントに、もう既に冬服でボロボロの学校鞄を持ったヤンキーだった。

「あっ!! 猫追いヤンキー!

!」

風は亜嵐を指さしてその場に立ち上がった。今朝見た猫を追いかけるヤンキーが亜嵐であり、亜嵐はピンと来た様子ではなく、風をガン見していた。

「あのぉ? 私の顔に何か付いてる?」

しかし、亜嵐は一言も喋らず風をガン見していた。

「何か喋って。 どうもーーーー!!しか喋ってないよあんた」

しかし変わらず、亜嵐は一言も喋らず風をガン見をしていた。

「怖い怖い 。 えっ? 時が止まってる? まさかお前は時を止める力でも有しているのか!? ならば、使うしかあるまい……サポートカード発動!!」


亜嵐は派手に後ろに飛び、黒板に頭をぶつけて床に頭をぶつけて倒れてしまった。

「サポートカードの威力凄まじいな……」

「おいそこの二次元、席に着け。 ……亜嵐もさっさと席に着け。 算学の前が空いてるから」

遠は亜嵐の髪型には触れずに、遠はチョークを軽く亜嵐の顔に当てて、亜嵐は意識を取り戻し、算学の前の席に着いた。元々算学の前の席は女子生徒が座っていたが、一学期の最後の前日で他の学校へと転校していった。


その日の授業は亜嵐に話し掛ける者は誰一人も居らず、亜嵐が他の生徒に話し掛ける事もなく、スムーズに授業は進んで終礼の時間になった。亜嵐は真面目に授業を受けていて、ノートに黒板に書かれた事をみっちり書き写して、先生から指名された時もはっきり返事をして、綺麗な文字で黒板に答えを書いていた。終礼を遠が始めようとすると、急に亜嵐が立ち上がった。


「俺はこれからヤンキータイムに移らせていただく!!」

亜嵐に視線が注がれて、亜嵐は誇らしげで、また風の方を見ているようで、風は視線を外して算学の方を見てみると算学は夢の中で、豊海瑠璃とようみるりの方を見てみると、算学からメラメラとしたオーラが立ち昇っているのが分かった。すると、瑠璃は立ち上がり瑠璃は亜嵐に対して指さした。


「さては貴様俺のようなクラスのアイドル的な、クラスの人気者的な、クラスの一番星的な、クラスのお寿司屋さんにある茶碗蒸しの中にある海老的な、クラスの……」

瑠璃が中々言葉が決まらずにいると、亜嵐がポケットに手を入れて二枚の紙を取り出した。

「五月蝿いぞそこの人間。 ヤンキー族にとってお前の様な目立ちたがり屋は邪魔でしょうがない……祓いたまえ、清いたまえ!」

亜嵐が持っていたのは御札ではなく、スーパーの割引券だった。

「いい加減にしろ! 目立ちたがり屋をさっさと鎮めんか! 東城!」

遠の一言で今度は風に視線が注がれて、風はアタフタした。風は取り敢えずと瑠璃を羽交い締めにしてみた。亜嵐はほぼ初対面で羽交い締めをするのを躊躇したが、亜嵐がなんだか欲している様な笑顔でいた為、瑠璃よりも強めに亜嵐を羽交い締めした。




「何だったんだ? ヤンキーなのか? ヤンキーぶってるバカ真面目なのか?」

風は二学期初めての数学部の活動中、算学に聞いてみた。

「あ? あのリーゼントの事か? ただの”気狂い”だろ」

「”気狂い”って……で、その気狂いがいるんですけど……!」

廊下にて、ガラスの窓に顔を押し付けて風達を覗いている亜嵐がいた。

「気になるんだったら、別に入ってきて良いわ……きゃあぁぁ!!」


風が妥協して部屋に亜嵐を入れる事を決めたが、いつの間にか風の机に正座していて、モジモジしていた。流石に算学も呆気に取られたようで、口が開きっぱなしになっていた。

「師匠!! 私を弟子にして下さい!!」

亜嵐は正座のまま風に対して頭を下げた。

「師匠!? 何の師匠よ!」

「分かってますぜぃ。 貴方様こそヤンキー族のエリートであり、二次元言葉の使い手と私の目が、私の脳が、私の……」

すると、亜嵐の肩を算学はつつき口を開いた。


「お前は色々と勘違いしてるぜ。 風はヤンキーじゃないし、ゴリラじゃないし、二次元言葉のゴリラじゃない。 だから、ゴリラになれない」

「いやゴリラ一言も言ってないですけど、てか最終目標がゴリラって何ですか?」

風が即座にツッコミを入れると亜嵐が風と算学を交互に見つめると、ニヤリと笑った。


「お二人さんもしかして……」

風は冷や汗をかいた。何故ならしっかりした人に関係性がバレるのはまだマシだが、今日初めて出会った人で、まだどういう人間か分からず、第一印象として絡みたくない、苦手のタイプだった為、風は少々焦っていた。


「仲良しさんですか?」

風の予想を遥かに越えた亜嵐の返しに少し時間を有したが、ここは素直に頷くだけにしようと風は思ったが、算学はどうやらそうではなかった。

「仲良しさんではない。 ゴリラとその飼育員だ」

すると、亜嵐は風の机の上で子供の様にはしゃぎ、風の肩を強めに何度も叩いた。

「新キャラの分際で何はしゃいでんじゃい……」

風は立ち上がり、亜嵐の胸倉を掴んで、外側の窓を開き、外に亜嵐の身を出した。ここは三階で落とされたら死は確定の状況だった。流石の亜嵐も焦り出して、直ぐに謝った。

「すいませんでした。 すいませんでした。 お願いですから、生かしておいてください親玉!!」

しかし、亜嵐の最後の親玉の部分が気に食わなかった風は全く様子は変わらなかった。


「止めとけ止めとけ、学園サスペンスにしたくないだろ、風」

算学の言葉を受けて風はツッコミを入れたかったが、今の状況をよく考えて、亜嵐を引っ張って、部屋の床に亜嵐を叩き付けてお仕置はこれで済ます事にした。そんな亜嵐によって色んな問題が舞い込んでくるとは知る由もなかった。

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