刹那高校二年二学期編

第41話・新たなミッション

八月から九月へと月が変わった。学生達は再び学校生活が始まるのをわくわくする気持ちと嫌な気持ちを持って二学期が始まった。風達と同じクラス会長の瀬戸瀬麗奈せとせれなの挨拶により、刹那高校の始業式が始まった。刹那高校の校長は三分以内に話を終えて始業式が無事に終了した。


「おい俺、前回ウ〇チまみれだったんですけど、これ絶対航也枠だよね。あの後俺どうなったか、書いてなかったよね? ねぇ? ねぇ?」

豊海瑠璃とようみるりが怒りを東城風とうじょうふうにぶつけた。風は耳に指先で蓋をした。

「聞いてませーん。何も聞いてませーん」

ふざけていると担任の教師鳴子遠なることおいが教室に入ってきた。


「今日より二学期だ。体育祭、生徒会長選、文化祭といった沢山の行事がある。まだ先だと思ったらあっという間だ。一日一日大事にそして将来について考える、もしくは決める人生の大きなキーポイントだ」

その後も長い遠の話は続き、風は思わず寝てしまっていた。


二学期始まりのこの日はテストも行われた。風は特に数学に力を入れていた。算学数さんがくすうとで夏休みに数学部の部活動を行ったからだ。そして何より良い成績をとって算学に見返す為でもあった。数学部のおかげで数学の問題はスルスル風は解くことが出来た。風は思わずテスト中に笑みを浮かべた。




「楽勝、楽勝。ねぇ、弥生……」

風はテストを終えて三毛弥生みけやよいの席の方を見るとそこには弥生はいなかった。弥生は未だに病室で眠っていた。事故の再発により気を失って、あれから一度も目覚める事は無かった。

「これから体育祭の応援団を決める。さっさと決めてさっさと帰るぞ!」

クラスの一人の男子生徒の呼び掛けにより、クラスの生徒は残り、応援団のメンバーを決め始めた。応援団は一年、二年で構成され、応援団長は二年の中で決めるきまりだった。風はどうでも良いと思って鼻の上にシャーペンを乗せていると、一人の生徒が手を挙げた。


「東城さんがいいと思います!」

手を挙げたのは、風と同じクラスの生徒ではなく、一個下の西尾染杏にしおそあんだった。

「えっ? 染杏ちゃん? 私なんか無理よ。無理無理ムーンライト!」

風は思わず否定と、しょうもないギャグをすると場は静まってしまった。

「とにかく私は無理だから!」

すると今度は瑠璃が手を挙げた。


「俺も東城さんが良いと思います!」

「誰が東城さんだ! 風だ! 」

「いや東城さんでも風でもあるから……風は取り敢えず、団長な」

クラスの生徒の目線が風と瑠璃に注がれている。

「俺も豊海に賛成!」

「俺も俺も!」

「女団長ここに降臨だ!」

男子生徒が瑠璃の提案に賛同し出した。風はこっそり算学の様子を伺っていると、算学は眠っていて、風と同様に鼻の上にシャーペンを乗せていた。すると今度は女子生徒が手を挙げた。


「風ちゃんが応援団入るなら、豊海も応援団に入れば良いと思う!」

瑠璃は待ってましたかのように、声を上げた。

「おぅよ! この豊海瑠璃も、応援団に入らさせて頂き参ります!」

すると大拍手により、場が盛り上がった。まるで瑠璃が風に告白したかのように。

瑠璃は暫く大笑いすると、眠っている算学の方へと歩き、算学の鼻の上に乗せていたシャーペンを取り上げると、算学の頭は下がっていき、机に頭をぶつけて起きた。

「よーし、この算学も応援団に加えて参るぞ!」

その瑠璃の言葉を受けて、女子生徒が次々に賛同し出した。算学は起きたばっかりで状況が読めず、目を丸くしていた。




「何でこんな結果になるのよーー!!」

風は放課後、屋上にて遠くに見える山に向けて叫んだ。

「第一話の再放送してる暇あったら、応援団の役割分担とか決めんぞ」

瑠璃はそう言って屋上にて踊り始めた。

「責めてさ……瑠璃が団長やってよ」

「待ってくださいよ。団長殿。私には荷が重いでございます」

風がすかさず、反論しようとしたが、変わりにその場にいた算学が反論した。

「男が団長に決まってんだろ!!」

「じゃあ、君がやる?」

「……そう言う事では無い……貴方がやってはいかがでしょうか?」

瑠璃の間髪入れずの返しを算学は戸惑いながらも、気持ちを落ち着かせて敬語で提案した。

「しゃあねぇな、俺が団長やるしかないっしょ!」

急に瑠璃のやる気スイッチが入った。風と算学はお互いを見て、グッドポーズをした。


瑠璃は他のクラスの男子生徒と下校したらしく、屋上には風と算学の二人が取り残された。

「そういえば、”元カノ”さん来なかったね」

「お前から話切り出してくるとはな」

”元カノ”とは、八乙女胡桃やおとめくるみのの事である。二学期から別の高校から転校して来ると本人から言い、二人は気を引き締めていた。

「二学期からと言ったけど、”初日”からとは言ってはない。もしくは……」

「嘘かもしれない」

算学はゆっくり頷いた。


「今日はもう遅い。俺達の次なるミッションに”応援団”というミッションが課された。だから……」

算学が珍しく熱く語り出してる中、風が子供のように騒ぎ出した。

「ミッションミッションって、まだクリアしていないミッション山積みだよ!!」

その様子を見た算学は黙って帰ろうとした。即座に算学が着ている制服の袖を風は掴んだ。

「レディが困ってるんだよ」

「レディ? どこにいる? 」

「見えないですか……眼科予約しますね」

「予約必要無いですねぇ。目は良いんですよねぇ。貴方の頭が悪いと思うので、脳外科紹介しますねぇ」

「脳外科? 何言ってるの? この人、怖いんですけどぉ――!!」

風は語尾を上げて、夕日に向かって叫んだ。算学はその隙に帰ってしまった。


風は自分の部屋にて、テキトーに描いた算学の絵を壁に貼り、拳で殴り付けていた。

「お姉ちゃん何やってんの!?」

何が起きたのかと妹の東城柚とうじょうゆずが風の部屋に入ってきた。

「安心して……殴ってるだけだから」

「安心出来ないから来たんだよ! お母さんが不倫するぐらい安心出来ないんですけど!!」

すると床が揺れ始めたと思うと柚の目の前に二人の父、東城小正とうじょうこしょうが現れた。


「翔子は不倫しないから!! ほら、風も言ってや……どうした風!?」

「悪いけど、絵じゃこの気持ち収まれない……代わりに黙って殴られろ!!」

風は小正の腹に一撃決めた。小正は後ろに倒れてしまい、柚が軽く小正の顔を叩いても反応は無かった。

「一撃だけだったけど、スッキリした。……おやすみ」

風はそう言うと部屋のドアを閉めて、眠りについた。


「私も寝る、おやすみ、諸刃のサンドバック」

柚も同じく自分の部屋へと行ってしまい、眠りについた。小正は何とか目覚めた。

「俺放置なの? えっ? このまま終わる感じ? ならせっかくなので、俺の十八番でえーーゴホン。あっ」

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