第39話・訳あり公園

夏祭りからあっという間に時が経ち、二学期始業式前日になった。生徒達がまだ終わらぬ宿題に追われている頃、東城風とうじょうふうは病院を訪れていた。理由はまだ目が覚めない三毛弥生みけやよいのお見舞いだった。弥生のいる病室を訪れると先客がいた。柱号平太ちゅうごうへいただった。


「三毛さんとは余り喋った事無かったし、詩画薇を何故か苦手意識持ってたね……」

弥生は一度も目を覚めることなく、風は定期的に病室を訪れていた。

「ちょっと場所変えてさ、こん前の続きするわ、”そこの人”も含めて」

すると病室に算学数さんがくすうが頭を掻きながら入ってきた。




病院の一番近くの公園にて三人は話する事になった。が、そこには藤谷航也ふじたにこうやが女性に告っている状況に出くわした。三人は静かに様子を見守る事にした。

「僕の彼女になって下さい!!」

三人は分かっていた。どういう結果になるかを。

「ごめんなさい!! 私、爪研ぎ常に携帯している人無理なんで」

その女性は走り去り、地面に膝から砕け落ちる航也だけが残ってしまった。


「結果は分かってたけど、理由が爪研ぎかよ……いやなんで爪研ぎ携帯してんの?防災対策ですか?防犯対策ですか?まさか、女性の爪を切りたい変な癖でもあるんですか?」

思わず風は大きな声でツッコミが炸裂して航也に気づかれてしまった。


「何でや、何でモテへんのや、俺何かした?俺スタイル抜群やのに」

「そういう所でしょ、痛いよ」

風が冷静に冷たい視線を航也に向けて指摘した。航也は子供の様に泣きながら逃げ出してしまった。




「……色々あったけど、話しようか、それは東城さんの親父さんの事について」

風の父は東城小正とうじょうこしょうで、特に小正から平太の事は聞いてはこなかった。

「東城さんのお母さんと結婚してるから、東城さんは産まれてきたのは分かるけど、もしかしたら、別の人と結婚してたかもしれないんだ」

風はその言葉を受けて、もしやと思って口を開いた。

「お父さんとお母さんの昔の話なら聞いたよ。確か、お母さんの当時の担任の先生が、お母さんの事が好きだったとか、それでその担任の先生がお父さんを殺そうとしたと」

平太は頷き、話を再開した。

「なら話は早い。その時、東城の親父さんの身代わりになった人がいたよね?」

今度は風が頷いた。

「実はその人、”僕の親父の兄貴”なんだ」


「伯父さんという事?えっと、エット、え……」

風はちょっと気持ちが乱れてしまった。そんな風に対して算学がため息をついて、黙って風の肩を優しく二回叩いた。

「大丈夫、大丈夫。その事を聞いた当時の僕も直ぐに冷静さを保つ事は出来なかったから」

平太と算学の対応で、風は取り敢えず心を落ち着かせた。


「僕の伯父さんが身代わりになって亡くなったけど、過去には風さんの親父さんに対して悪行を働いていた」


その平太の伯父さんは元々一流企業に就職しており、かなり頼れる存在で就職して直ぐにリーダー的存在にのし上がった。しかし、ある日いきなりリストラにあってしまい、職を失ってしまった。ある日平太の伯父に手を差し伸べる男がいたが、その男は平太の伯父を利用して小正からお金を持ち逃げした。男は逮捕され、自分は逮捕されず、罪の意識があった。そんな時に小正がナイフで殺されようとした。平太の伯父は走った。 心臓が悪かどうか関係なかった。平太の伯父はギリギリで小正の前に立ち、思い通りにナイフによって心臓が貫かれた。平太の伯父は救急車に運ばれている最中、息を引き取った。

「すみませんでした……不器用なやり方でしか……罪を償う方法が無かった……償えきれたら幸せだな……」


「僕の父さんも悔いていてどうすれば東城さんのお父さん。いや、東城家に許しを得られるかを考えていて、僕もその気持ちは一緒で……ごめん」

平太は喋っている内に泣きそうになり、言葉に詰まってしまった。そんな中、空気読まずに算学が口を開いた。


「で、東城と俺に繋がりがある事はなんでお前が知ってるんだよ」

「ちょっ……少しは空気読んだら?」

「いいよいいよ、実は見た事があったんだ。東城さんと算学君の幼い時にね」


「早く教えろ、俺達が幼い時に何があったんだ!?」

「だから空気読めって言ってんだろうが!!」

風は怒りが爆発して算学のお尻に向かって足蹴りをキメようとしたが、軽く算学が避けて風の足蹴りはきまらず、風は体のバランスを崩して転倒しようとなるが、算学が風の腰を支え、何とか転倒せずに済んだ。

「全く、その癖治せよな」


「……話を再開するね。」

平太の話は再開した。幼き二人は誰もいない綺麗な花畑にいた。その様子を家族で来ていた平太がたまたま見掛けた。


「いやいや待て待て何でその当時の幼い頃の風の事知ってんだ? 小学校や中学校で知り合ったんじゃねぇのか?」

算学が疑問を持ち、平太の話を遮った。風は咳払いすると、巨大なフリップを持ち出した。

「えー説明しよう! 実は私と弥生、瑠璃が保育園の頃から幼馴染で、ここがややこしいんだけど、瑠璃と柱号君は幼馴染。柱号君は別の保育園」

「ツッコミを入れたい気もするけど、僕はその当時、瑠璃が自慢そうに写真を見せつけてきたんだ。」

そう言うと平太はポケットから一枚の写真を取り出した。それはびしょ濡れの真っ裸の幼き風と瑠璃が写っていた。風はブチ切れていて、瑠璃は大爆笑している写真だった。風は平太が持っている写真を奪い取り、即座に粉々にした。


「こんな写真わざわざ持ってくんな!!」

「まぁまぁ、落ち着いて……この写真キッカケで東城さんという存在を知ったんだ」

「どういう覚え方されてんの!! 瑠璃を今にもぶん殴りたいんですけど!!」

「呼んだ? 露出狂?」

呼ばれたかのように豊海瑠璃とようみるりが三人の目の前に現れた。


「おい、瑠璃……さっさとこの写真を冥界に送れと行ったよな……」

風の怒りで地面が揺らいでいる錯覚に三人は陥った。

「……そこはまず驚いて下さいよ……とにかくすいませんでした!!」

瑠璃は正直に謝り、その場に土下座した。

「おやおや、素直で良い子だ。良い子だ。で?」

「で? とは?」

風は笑みを浮かべると、瑠璃の脳天に巨大なフリップをお見舞いした。

「で? じゃないよね、ゴミ。 最後にあの言葉言わんかい!!」

三人の視線が瑠璃に集まり、慌てて口にした。

「次回に続く!!」

「よく出来ました。粗大ゴミ」

もう一度瑠璃の脳天に巨大なフリップをお見舞いした。瑠璃の悲鳴が公園中に響いた。

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